インタビュー
吉野機械製作所 代表取締役CEO 吉野 友章 氏
- 投稿日時
- 2025/09/12 08:00
- 更新日時
- 2025/09/12 13:48
曲げ加工を完全自動化へ、人と共存する現場改革
建材やシャッターなどを加工する精密板金装置に強みを持つ吉野機械製作所は、7月19日まで開催されたMF―TOKYOで、完全自動曲げ加工システム「YSP-R」を出展した。同社のプレスブレーキは、独自の倍力機構を持つサーボモーター駆動が特長で、電動でありながら最大400トン、最長曲げ長さ6mの大物ワークにも対応する。近年、現場の省力化ニーズを捉えロボットによる自動化ソリューションの提案も進めてきた。同社・代表取締役CEOの吉野友章氏に話を聞いた。

――MF―TOKYO2025では前回に引き続き、完全自動曲げ加工システム「YSP-R」を出展しました。
「YSP―Rは、図面データを取り込むだけで金型選定から曲げ順序の最適化、ロボットの軌道生成まで全て自動化するティーチングレスのシステムです。今年はCAD/CAM側とロボット動作を制御するソフトウェアの連携をより高め、一貫した自動化フローを実現しやすくしています」
――なぜより高度な自動化システムが求められているのでしょうか。
「まず、製造現場の人手不足が理由です。曲げ作業は体力と技術を要するため、担い手が急速に減少している。特に弊社のお客様である建材などの大型ワークを扱う企業だとより深刻です。さらに、外注先の工場も減り、内製化に舵を切り始めています。そのため、誰でも簡単に扱える設備へのニーズが高まっています」
「また、近年建材のプレファブ化(工場でのあらかじめの組立・加工)が進んでおり、納品先の現場ですぐに据付けられる状態まで加工したいニーズが増えています。そのため、現場ごとに少しずつ異なるワークを加工することが求められています」
――ニーズに対しシステム側はどう対応する。
「従来のロボットシステムでは、製品サイズが数㍉異なるだけでもティーチングをし直す必要がありました。そのため、自動化できるのは単一品種を大量に生産するワークだけ。YSP-Rは、当社独自のアルゴリズムを組み込んだソフトウェアが、金型組み合わせや加工順序を自動で最適化するため、多品種少量生産のワークにも対応できる。従来のシステムでは対応できなかった領域に踏み込めます」
――まさに完全自動ですね。
「はい。でも実は、完全自動化だけでなく、人とも共存できる点が当社のシステムの特徴です。産業用ロボットは安全規格上、人と一定の距離を取る必要があります。そのため、産業用ロボットを導入した装置はロボット向けの仕事しかできず、運用を固定化してしまっていました。YSP︱Rは、ロボットを物理的に固定化することで安全性を確保。人が作業空間に入れる設計としました。そのため、人でしかできない曲げ加工は人で、自動化できるところはロボットでといった使い分けができる。昼間は人が操作し、夜間はロボットで無人稼働する。そんなモード切替が現実的になります」
――今後の展開について教えてください。
「今回のロボットシステムは汎用的に使えるように想定して作っています。今後は、曲げ加工以外の領域にも対応していきたい。また、当社は自動化ラインも手掛けている。前後工程も含めた省力化ソリューションとしての提案を強化し、現場に寄り添う自動化技術の提供を進めていきます」
吉野機械製作所の完全自動曲げ加工システム「YSP-R」
生成AIを機械管理に活用
吉野機械製作所は、生成AIを活用した機械管理システムを開発中。機械の様々な動作データをリアルタイムに生成AIに読み込ませることで、機械の状態や稼働分析をチャット形式で把握できるもの。機械マニュアルなども学習させているため、異常が起こった際の状況把握や対応など、従来熟練作業者に頼っていた業務にも対応する。「使えるものは使って早急に現場負担を軽減していきたい」とし、来年4月の販売を目指す。
(日本物流新聞2025年9月10日号掲載)