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インタビュー

BYD 日本商務部統括部長 陳  浩 氏

投稿日時
2023/02/21 16:23
更新日時
2023/02/21 16:28

バッテリー技術が実現した「廉価で安全」なEV

EV国内販売台数で他国を大きくリードする「EV大国」中国。その中でも圧倒的なシェアを誇るのがBYDだ。中国国内では10年連続でEV販売台数トップをキープ、世界販売台数でもテスラと抜きつ抜かれつのデッドヒートを繰り広げている。その優位性を揺るぎないものにしているのが、祖業であるバッテリー開発だ。BYDにおける最新のバッテリー開発とマーケット攻略について、BYD日本商務部統括部長兼東京オフィス総代表の陳浩氏に聞いた。

――2022年は中国国内で大きくシェアを伸ばしました。

EVは前年比約28倍となる911000台、PHV(プラグインハイブリッド車)は約35倍の946000台、新エネルギー車の総販売台数も2021年の594000台から1857000台と好調なセールスを記録しました。これは新エネルギー車における国内販売2位の上汽通用五菱汽車(ウーリン)を100万台以上上回る数字です」

――大きく伸長した要因を教えて下さい。

「先進的なバッテリー技術の活用、中国国内におけるブランド力の向上、クルマに対する信頼感など様々な理由が挙げられますが、中国政府が新エネルギー車普及のために支給していた補助金が2022年末で打ち切られたため、駆け込み需要が生まれた側面もあります」

――一方でここ数年、貴社が得意とするバッテリーのシェアについては、CATL(寧徳時代新能源科技)に少し水を開けられた印象があります。

CATLが得意とする三元系リチウムイオン電池はエネルギー密度が高く、航続距離を長くすることができますので、ここ数年多くのメーカーが相次いで採用しました。しかし、当社が得意とするリン酸鉄リチウムイオン電池『ブレードバッテリー』は、独自の技術で後続距離は三元系リチウムイオンバッテリーにも勝るとも劣りません」

――ブレードバッテリーの特徴について教えて下さい。

 「三元系リチウムイオン電池を採用したヒョンデの『IONIQ5』やGMの『ボルト』などが相次ぎ発火事故を起こしていますが、クルマにはまず安全性が求められます。当社のブレードバッテリーが正極に使用しているリン酸鉄リチウムイオン電池は結晶構造が強固で、熱安定性が高いのが特徴です。すなわち、安全性が非常に高い。YouTubeの動画でも公開していますが、ブレードバッテリーに釘を刺す実験も行っていますが、熱暴走は起こっていません。同様の実験を三元系リチウムイオン電池で行えば、爆発してしまいます」

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BYDの開発した「ブレードバッテリー」

■EV普及に貢献するLIB電池

――バッテリーを刀のような形状にした理由は。

「ブレードバッテリーは長さ2㍍、厚さ135㍉のブレード状のセルを複数並べて構成されていますが、これは車体の下部に設置した時にフレームとしての役割を持たすことも考えて設計されています。つまり、エネルギー体でありながらシャシーの一部でもあり、バッテリーパックを直接支える梁の役割も果たします」

――従来のリン酸リチウムイオン電池から大幅に性能向上を果たしています。

「ブレードバッテリーは限られたスペースにより多くのセルを搭載し、体積利用率を従来の50%以上向上させています。これはEVの航続距離を50%伸ばすことと同義です」

――コスト面でも優位性が見込めますね。

「はい。三元系リチウムイオン電池はコバルト、ニッケル、マンガンといったレアメタルを使用しなければならないので、必然的にコストが高くなります。その点、リン酸リチウムイオン電池ベースのブレードバッテリーは、消費者が購入しやすい価格のEV生産にマッチしています。価格面は今後のEV普及においても重要なファクターになります」

――バッテリーの劣化についてはいかがでしょう。

「日本で131日より販売開始した『ATTO3』は8年間/15万キロの保証をつけています。SOH(ステートオブヘルス/初期満充電容量を100%とした際の劣化後の満充電容量)の基準は70%ですので、きわめて劣化しにくいバッテリーと言えます。また、2015年に路線バスに当社EVバスが日本国内に導入されていますが、こちらは7年経過しても目立ったバッテリー劣化は見られていません」

――貴社のブレードバッテリーは、他の自動車メーカーにも供給されていますね。

「日本車メーカーではトヨタと協業するカタチで供給しています。また2021年からはライバルメーカーの一社だったテスラにも供給開始しています。自動車業界のリーダーであるトヨタやEVの先駆者であるテスラが当社のバッテリーを使う意義は極めて大きいと考えています」

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日本国内で販売されている「ATTO3

(2023年2月25日号掲載)