インタビュー
AIoTクラウド プロダクトマネージメント部 課長 大崎 公司 氏
- 投稿日時
- 2025/06/27 09:21
- 更新日時
- 2025/06/27 09:25
AIで点検を自動化・効率化、データ活用を促す攻めの点検へ
製造現場には多くのアナログメーターが存在し、そのチェックや報告書の作成は人の仕事だ。シャープの家電分野のAI・IoT部門が分離独立したAIoTクラウド(2025年7月1日付でシャープに吸収合併)は、スマホや固定カメラで読み取った様々なメーターの画像をAIで数値データに変換。点検業務を効率化するとともに読み取りミスを防ぎ、信頼性の高いデータを蓄積してそこから付加価値を生みだす「攻めの点検」へ転換を促す。

――事業概要を教えてください。
「社名の通りAI・IoT・クラウド事業が核です。元々シャープで家電のAIやIoT開発を担っていた事業部が、技術を外部提供するために2019年に分社化。現在はSaaSプロダクトとしてアルコールチェックを効率化しクラウド管理するサービス『スリーゼロ』と、設備点検DXサービス『WIZIoT(ウィジオ)』を提供しています」
――WIZIoTは点検をどのように効率化する。
「スマホや固定カメラで取得したアナログメーターの画像や映像からAIで数値を読み取ります。工場で使うメーターの大半に対応しており、ランプの点灯状況や色まで読み取りが可能。点検結果はクラウド管理され、1日分の点検が終われば承認依頼が管理者に届き、承認が終わると点検者と承認者の署名付きで日報を自動作成します。紙で行っていた点検業務を大幅に効率化できるサービスです」
――スマホと固定カメラはどう使い分ける。
「基本は『ハイブリッド利用』を推奨します。確認頻度が高かったり高所など巡回に手間がかかったりするメーターは固定カメラを設置し、クラウドに常時録画してあらかじめ決めたスケジュールに沿ってAIで自動的に数値化。それ以外のメーターは人が巡回し、スマホをかざすだけで記録が完了します。とはいえ現場には異臭や異音、外観など計器ではなく人の感覚で行わざるをえない点検もある。その場合は、あらかじめ点検箇所にQRコードを貼り、スマホで読みこむと設定した選択肢がアプリに表示され、それを選択すれば簡単に点検を行える仕組みです」
スマホでアナログメーターの数値を簡単にデータ化できる
――AIの進歩で点検の効率化サービスが増えています。WIZIoTのストロングポイントは。
「まずはスマホと固定カメラのハイブリッド方式であること。どちらも選べるサービスはごく一部で、双方の利点を活かせます。また価格もかなりポジティブな反応が多いです。最小1カ所から始められ、部門予算でスモールスタートが可能です。固定カメラは高額になりがちですが、我々のカメラは税込3980円で簡単に導入可能。この価格感でIP67に準拠しており、赤外線で暗所も撮影できます。設置工事も不要で手軽さは大きな強みです」
■8%のミスを0に
――実際、アナログメーターはまだ現場に多いんですか。
「ものすごく多いです。最も多いのは圧力計で、電力計や電流計も多い。すべてをデジタルに置き換えるには多額の費用が必要で、一帯の入れ替えに1000万円以上かかってしまう例も珍しくありません」
――その点WIZIoTはスモールスタートできるので、単に点検を効率化するだけでなく様々なデータを集約する用途でも活用が見込めそうですが。
「実際、データ活用を目的とした導入が多いです。設備異常の有無の確認だけなら最悪、紙のままでも良いという判断に傾く場合もありますが、データ活用では正確性が重要。人が集めたデータが果たして正しいのか、整合性の確認にはかなりの手間がかかります。人だと目盛りの読み間違いや記入ミスが常に起こりえます。点検が雑になるなど形骸化もしやすい。信じられないかもしれませんが、実際に当社のラボで行ったテストでは注意深く作業を行ったにもかかわらず、人と紙による点検では8%のヒューマンエラーがありました。この数字は一切、盛っていません」
――すると人による様々な点検が信じられなくなりますね。
「温度や圧力など製造ラインで品質のトレースに使うようなデータは間違えると重大な問題を引き起こす可能性があります。WIZIoTは何かが起きてもクラウドに蓄積されたデータを見れば良い。チェックがすごく簡単になるのでデータ活用が相当、促進されます。点検は従来、異常の有無を確認することが目的のいわば『守りの点検』が大半でした。我々は設備の予知保全や省エネなど、ビジネスを前に進める目的の『攻めの点検』への転換を目指します」
(日本物流新聞2025年6月25日号掲載)