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インタビュー

山善 商品企画1部 MD 加美 将希 氏

投稿日時
2025/10/24 09:00
更新日時
2025/10/28 09:36

『語れる家電』で冬商戦をリード

山善はデザイン性を重視した暖房家電の新モデルを相次いで投入している。「WIDEスリムセラミックファンヒーター」と「デザインセラミックファンヒーター」は、いずれも機能とデザインを両立した意欲作だ。商談会でも高い評価を得ているという。開発を担当した同社・商品企画1部MDの加美将希氏に、デザインへのこだわりを聞いた。

加美将希氏と「WIDEスリムセラミックファンヒーター」。加美氏は着る電気毛布「くるみケット」や背面カバーも開閉でき手入れがしやすい「オープントースター(OPEN TOASTR)」など、これまでにもヒット商品を生みだしてきた

「つまめる」デザインで電気暖房に新風

――電気暖房担当になって初めての製品開発でした。意識したことはありますか。

「前任者が築いてきた実績やデザインの方向性は大切にしつつ、この限られた商品群の中で、どれだけ自分の『色』や『エッセンス』を出せるかを意識しました。せっかく新しい商品を作るなら、前と同じでは面白くない。私自身、何か語れる部分を持ったエッジの効いた商品が好きなので、機能一辺倒になりがちな電気暖房に、デザインなど+αの要素を持ち込みたいと考えました」

――「WIDEスリムセラミックファンヒーター」はわずか11㌢の“つまめる薄さ”が特徴です。どんな経緯で生まれたのでしょう。

「この商品はデザイン会社のカロッツェリア・カワイとのコラボ開発品です。そもそもパネルヒーターは薄く見える商品ですが、この『薄さ』を追求したいと伝え、同社からいただいたデザイン案をもとにすり合わせていきました。例えば、従来から前面パネルにはRがついていましたが、曲率の違う2種類のRを使い分けることでよりエッジを強調したデザインにしました。つまめるから何だと思われるかもしれませんが、あえて強調する面白さがあると思っていて、商談の際も概ね良い反応をいただけたと感じています」

――シンプルながら、細部まで考え抜かれた。

「はい。製品そのものだけでなく、カタログや化粧箱といったビジュアル面にもこだわりました。暖房機器には赤やオレンジなど『あたたかさ』を意識させる色を使うことが多いですが、あえて寒色を基調とすることでシャープな製品デザインとの統一感を意識しています」

■空間を邪魔しない円柱型ヒーター

――「デザインセラミックファンヒーター」もデザインに特徴がありますね。

「『洗練された佇まいと住空間の格上げ』をコンセプトに、商品前面を覆うように金属メッシュを採用し、一見ファンヒーターと感じさせないデザインが特徴です。脚部もあえてシルバーにすることで、浮遊感のあるデザインを演出しています」

――セラミックファンヒーターとしては珍しく首振り機能も搭載しています。

「そうですね。セラミックファンヒーターは四角く横幅が広いのが一般的。首振り機能をつけると可動面積を余計に考える必要があります。円柱形にすることで動作時を意識せず設置でき、首を振っても景色が変わらないのでどこにおいても空間を邪魔しません。しかも35デシベル以下の静音設計。寝室や書斎など、静けさを求める場所でも快適に使えます」

――商談会での反応はいかがでしたか。

「ありがたいことに、バイヤーの方々からは非常に高い関心を寄せていただき多くを受注できました。しっかりとこちらが伝えたいこだわりのポイントがあれば、まずは話を聞いてくださいますし、商談も盛り上がったと感じています。実際の受注状況についても手応えを感じています」

――暖房製品は難しさもある中、比較的良好な反応を得られた。

「細部までこだわるのは、はっきり言って手間も時間もかかるので正直面倒くさい作業です。また、こだわったからといって売れるとは限りません。一方で、電気暖房製品は機能的に劇的な進化を期待するのが難しい市場です。見た目や見せ方など感性的な部分で勝負していく必要があると思います。地道に細部までこだわることが山善のブランド力向上につながると信じてやっています。大変ですけどね(笑)」

山善_写真2.jpg

パッケージのデザインにもこだわった。商品画像を2面に跨ぐように配置することで目を引く印象的なデザインに

(日本物流新聞2025年10月25日号掲載)