インタビュー
港産業 取締役 オートメーションカンパニー社長 野口 栄美 氏(SIer協会幹事)
- 投稿日時
- 2025/11/25 14:27
- 更新日時
- 2025/11/25 14:29
ロボット化で徳島・四国を「働きたい県」へ
共創イノベーションによる価値創造
1950年創業の港産業は、電気、熱、水といった産業の動力に着目し地元の製造業が必要とする製品・サービスを提供してきた。特に自動化の推進に注力しており、オートメーションカンパニーではAIやIoTといった最新技術の提案を積極的に展開。特に医薬品分野でのコンピュータ化システムバリデーション(CSV)に実績を持つ。地域産業の生産性向上に貢献し続ける同社の取り組みについて、野口栄美オートメーションカンパニー社長に話を聞いた。

――最近のSIerとしての状況はいかがですか。
「ロボットを使った自動化に関して言えば、投資は横ばいで、大企業ほど積極投資をしており、導入決定までの期間も早いという印象です。一方、中小企業については、決断する経営者と、しない経営者に分かれている印象です」
「徳島は、大手製薬会社のお膝元であり、半導体関連、製紙関連、化学品関連と比較的産業がまんべんなく存在します。そのため、『あちらが悪ければこちらが良い』となり、売上に大きな波が出にくいのが強みです」
――四国全体でも同じような状況でしょうか?
「四国四県に営業所がありますが、産業がまんべんなくある点は同じです。ただ、愛媛県の造船関連には現在アプローチ中で、今後は造船に限らず愛媛県が重点注力地域となります。愛媛県自体が自動化への意識を高めており、同県の自動化に当社の実績を活かし貢献していきたいと考えています」
――製薬業界の自動化案件に強みがあると伺いました。
「当社の強みは、CSVに対応できることです。これは、主に医薬品や医療機器の製造・品質管理の方法が、常に期待通りの品質を持つ製品を製造できることを科学的に証明し、文書化することです。データの完全性(作成から廃棄されるまで正確で信頼できること)も求められます。ロボットシステムを組むのは、お客様に適した協力会社様をコーディネートし協業して取り組みますが、このCSVをトータルで対応できるところが少ないため、当社がその役割を担っています」
――中小企業での自動化事例はいかがでしょうか?
「中小企業では、協働ロボットを使った部品の投入により24時間稼働を実現したり、人が行うのは危険な作業を協働ロボットに代行させた事例があります。スペースが狭い企業が多いので、協働ロボットの需要が増えていますね。専用システムというより、『こちらの業務は落ち着いてきたから、今度は忙しいこちらを手伝わせる』といった、フレキシブルな運用を好まれる傾向にあります」
――EV関連にも関わられているそうですね。
「はい。EV用のバッテリー工場を建設する際には、当社の技術で協力しています。具体的には、当社が販売している横河電機の測定器を用いて電池電極シートの塗工量を測定監視しています。これができないと電池製造はできませんし、それができる企業は少ないので、世界中の電池工場の立ち上げ作業には、当社のバッテリー係のメンバーが出向いてサポートしています」
――非常に多様な製品を扱っておられますね。
「徳島県は市場規模が大きくないため、メーカーが支店を出せないことも多いので、当社は実質的にメーカーの支店的な役目も担っています。オムロン、横河電機、SMCなどのトップメーカーをはじめ、1000社以上取り扱っており、お客様の現場に合わせて最適な提案ができるのが特徴です。製品単体の販売から立ち上げ保証までワンストップでできるのが強みです」
――「港産業創立75周年記念DX・GX共創イノベーションフェア」ではボストン・ダイナミクスの四足ロボット「Spot」も展示されていました。
「フェアでは、参考出展として横河電機が所有しているSpotを持ってきてもらいました。今後は四国でロボットをインターフェイスとした検査や点検業務の自動化を実施していきたいと考えています。点検ロボットソリューション「ugo」も取り扱っていますし、自律型移動ロボットを使ったシステムを提案していきたいと思います」
――中長期的なビジョンをお聞かせください。
「四国は現時点ではロボット化が遅れています。人口減少が急激に進んでおり、生産性を上げる必要に迫られているため、自動化が急務です。私たちの目標は、5年後に徳島・四国を『働きたい県』にするために四国をロボット大国にすることです。より快適に働くため、単純労働や重労働から人間を解放し、価値創造型で専門性の高い挑戦的な仕事を創出するため、ロボットの実装を目指します」
――DX・GX共創イノベーションフェアはその一歩だと。
「当社は5周年ごとに記念事業を行うのですが、社員の意見を取り入れて展示会とセミナーを実施しようとなりました。今年のカンパニーの目標である『共創パートナーになる』をコンセプトに加えて、お客様、メーカー様、地域を共創でつなぎ、地域の生産性を高めるフェアにしようと取り組みました。『徳島・四国を働きたい県にする』という目標のため、社員がそのマイルストーンとしてこのフェアに頑張って取り組んでくれました」
港産業株式会社
創立:1950年 従業員数:124人
徳島県徳島市川内町平石住吉209-1
港産業 設立75周年記念事業「DX・GX共創イノベーションフェア」が11月11・12日(徳島)、11月14日(愛媛)で開催され、合計で105社の展示が行われた。横河電機がボストン・ダイナミクスの4足ロボット「Spot」を展示。地元紙にも大きく報道された。またセミナーも多彩で、ロボットSIer協会の久保田和雄会長も講演。人手不足でロボットに投資を決断する会社について「『単なるお金を出す勇気』ではなく『未来を見据えた戦略的決断』が必要、『現状維持はリスク、投資はチャンス』」と訴えた。
(日本物流新聞2025年11月25日号掲載)