インタビュー
太平電気 代表取締役社長 松見 哲也 氏(SIer協会幹事)
- 投稿日時
- 2025/11/25 14:23
- 更新日時
- 2025/11/25 14:25
電気工事を主事業にSIerに参入
機械・電気設計力で漠然とした依頼にも対応
鉄の町、北海道・室蘭で工場や風力発電の電気工事を主事業とする太平電気。機械・電気設計を強みにしながら5年ほど前からロボットSIerを事業に加えた。地元企業を含む、道内企業の設備投資に伴い本業がすこぶる忙しいという。

――貴社は1957年に設立され、工場や風力発電の電気工事の仕事をしてきました。
「日本製鋼所さんが当社の目の前にあり、そこのモーターの修理から当社の事業は始まりました。工場で使うモーターは焼き付くことがあり、それをリヤカーに積んで自社の工場に運んでばらして、その巻線を巻き直しました。その際、ベアリングなどを組み込みます。その後、工場内の電気工事の仕事にも携わるようになりました」
「ほどなく加工機に電源盤を付けたり、海外製を含め切削加工機の点検をしたりしました。その後、電気設計に携わり、機械設計を加え、風力発電設備に広がりました。風力タワーの配線工事、ケーブルハーネス作りなどをやらせていただきました。工場の稼働前の試運転からメンテナンス、修理までを担当し、1番遠いところで沖縄(日本製鋼の風車2期建設)まで行きます」
――ロボットSIer事業はいつから始めたのですか。
「髙丸工業の髙丸正社長が室蘭でされた講演を聞いたのがきっかけです。少子高齢化、多品種小ロット生産が進むなか、当社も自動化を含めてロボット導入に取り組むべきではないかと思いました。我々はロボットのロの字も知りませんでしたが、設計部隊がいます。北海道立総合研究機構(札幌市)のロボットに携わる方から教えを受けました。5、6年前になります」
「当社はあくまで電気工事がメインで、ロボットSIerとしてはお客様の依頼で年に何件かお受けできればと考えています。最初に三菱電機さんのロボットを1台買って、日本製鋼所さんの溶接を主に行う工場に、人手に頼っていた溶接ビードの削りを自動化しようと始めました。その後、バリ取りも同じロボットでできるようになりました。といってもSIer事業については当社は後発ですから、髙丸工業さんの協力を得て、電気工事に関しては当社が行うという形です」
――現在、売上の割合としてはどれくらいですか。
「ロボットの方はまだ1割あるかないかです。社員44人のうちロボットSIer事業を担うシステム事業部は10人ほど。このうち女性2人は一昨年、本当にロボットの仕事がしたくて入社し、当社のTRCタイデンロボットセンターで特別安全教育の講師を務め、イベント出展や学校への出前授業などを担当してもらっています」

2022年に開設したTRCタイデンロボットセンター
■後発ながら教育・展示施設を開設
――TRCタイデンロボットセンターは2022年に開設されましたね。
「事業再構築の補助金を利用し、銀行さんの空き店舗を購入して開設しました。大きなガラス張りの店舗で中がよく見えるので、ここにロボットを置けば多くの人に見てもらえると考えました。当社の本社から車で10分くらいの場所で、安全教育の実施とショールームの役割があります。まだ始めたばかりですが、当社には機械および電気の設計部門があり、電気工事も得意です。その部分を含めて引き受けられます」
――機械設計、電気設計ができることはどんな利点につながりますか。
「お客様が希望する設備の具体的な仕様がなくても仕事を受けることができます。自動化について大まかな希望をお聞きし、何を作ればいいのか、どんな動きをさせればいいのかを当社から提案できます。大企業さんであれば生産技術部隊がきちんとした仕様をお出しされますが、中小企業さんにとってそれは難しいことが多いですから」
――貴社が受注するのは主にどんな自動化ですか。
「研磨や溶接など鉄鋼関係のシステムです。納入実績としてはまだ2件。溶接と超音波検査のロボットです。髙丸工業さんは溶接を得意とされますので、当社がいちから学ぶより協業するほうが早いです。バリ取りについては当社で試験・検証まで終え、事業として来期にスタートできそうです。グラインダーを使った人手によるバリ取りは中腰で行うことになり負荷が高く、安全上の問題もあるので需要はあると見ています」
――北海道には同業者は少ないそうです。
「東北、北海道にロボットSIerは10社あるかないかのようです。SIer協会の会員となるともっと少ない。ですから当社としては横のつながりを大事にしようと考えていて、食品分野をメインとする釧路のSIerさんにそれ関係の仕事が来れば相談させていただいています。当社としては室蘭はやはり鉄の町なので、溶接やバリ取りを中心に据え、でも北海道は食品加工メーカーさんが多いので、箱詰め、パレタイズといった仕事にも携われたらと思います」
太平電気株式会社
1957年設立、社員44人
北海道室蘭市御前水町1-6-30
溶接・バリ取りロボットを年間数件の納入を目指す
日本製鋼所のモーターの修理から事業を始め、現在も同社向けの仕事が7割超を占める。工場内の電気工事、加工機の電源盤の設置や点検、電気・機械設計、風力発電設備づくりを主事業にする一方、5年ほど前からSIer事業を髙丸工業と協業して始めた。2022年に本社近くに教育・展示機能をもつTRCタイデンロボットセンターを開設。溶接やバリ取りの自動化を手がけ、地域がら食品分野も見据える。
(日本物流新聞2025年11月25日号掲載)