インタビュー
ヤナギハラメカックス 代表取締役 柳原 一清 氏(SIer協会副会長〈人材育成部門〉)
- 投稿日時
- 2025/11/25 13:40
- 更新日時
- 2025/11/25 14:54
人材を育成しエンジニアリング力をいっそう強化
世界ロボットサミット2連覇へ
今年、創業100周年を迎え、若手社員の育成に力を注ぐ一方、特異な技術をもつスタートアップと協業するなど付加価値の高いシステムを幅広い業界に提供する体制を築く。

――最近明るい話題はありますか。
「夏場を底に、止まっていたものが少しずつ動き始めました。当社にとっては大きな案件も控えており今後に期待しています。新しい取り組みについても、工作機械の自動化に関わる研究開発に参画していたプロジェクトが第1段階のフェーズを終え、次のステップに進むことになっており、大変楽しみにしています」
――貴社は若手社員がロボットSI検定を積極的に取得したり、セーフティーアセッサを持つ社員がいたりと、エンジニアリング力の高い人材が多い印象です。
「田舎の小さなSIerにしてはそれなりの技術を持っているのではないかと思います。若手の人材育成は力を入れてやってきました。2017年にショールームを兼ねたロボティクス支援センターを本社工場内に立ち上げ、顧客向けに実証実験や安全講習などを行う一方で、産業用ロボットの認知度を高めるべく地元住人にも開放しています。社員のやる気の向上にも役立っているようです」
――2021年に経済産業大臣賞を受賞されましたね。
「その年に開催されたWRS(ワールドロボットサミット、経済産業省とNEDO主催のイベント)での競技会において当社が優勝し、ご褒美としてその賞も授与されました」
――ロボット装置はどんな分野に納入されていますか。
「とりわけ強い分野があるわけではなく、満遍なく取り組んでいます。自動車業界を中心に老舗のロボットSIerさんがいらっしゃいますので、そこに入り込んでいくのはなかなかハードルが高いです。結果としてそれ以外の職種、業界の方の仕事をするようになったのですが、自動化、ロボット化の波は今の時代、全職種で求められるようになっています」

半導体製造装置メーカーへ出荷する、中央に小型アームをもつウェーハの移載機。半導体装置は10年ほど前から手がける。
――貴社システムの機能的な強みは。
「機能面での強みというよりは、当社が扱うロボットはファナック社を最も得意としており、それを最大限に生かすことができると自負しています。先ほどお話ししたロボティクス支援センターは単なるショールームではなく、お客様に導入するロボットシステムに必要な要素をセンターで徹底して実証実験を行います。大手機械メーカー様にOEM供給していることから、部品やユニットも当社でつくれるので、必要に応じて短納期で実験を行うこともできます。ファナック社を最も得意としていると言いましたが、一つを追求したことで、他メーカーのロボットも同レベルで扱うことができます」
■専業メーカーと協業
――国際ロボット展で何をアピールされますか。
「4つのシステムを出品します。1つはFingerVisionさんのハンドを使い薄板であるプリント基板を縦に掴んで運びます。I-PEXさんの『ES-Gripper』はコネクタ挿入開始時、嵌合完了時、引っ張り確認時のトルクを検知しコネクターを確実にセットするもの。食品用充てん機メーカーのジャパンシステムさんのクリームディスペンサーをロボットに付け、コンベヤにクリームで文字を書くデモンストレーションも行います。あとは参考出品になりますが、金沢大学さんと協業し、人手に頼っている冷凍カツオのカッティングを自動化するものも披露します。お客様の課題を1社ではなく、様々な企業とのコラボレーションで解決していく当社のスタイルをお見せできればと思います」
――課題はありますか。
「営業にも力を入れていく予定です。また、業界としてもまだまだ認知度の向上も必要です。今年12月、愛知県で4年ぶりに開かれるWRSは、全国規模に拡大した高校生SIリーグ(SIer協会主催)と同時開催となります。技術と営業の両面の向上に寄与すべく当社はWRSに再び出場します。前回優勝したので勝ち逃げしたかったのですが(笑)。前回はコロナ禍での開催で辞退された会社もあり、当社としてはラッキーが重なった結果とも言えます。せっかく出場しますので何か1つは挑戦をしようと、今回はROS(Robot Operating System=オープンソースのロボット制御ソフト)を使ってロボットシステムを動かします」
――ROSを使うことに大きな意味があるのですね。
「ロボットのプログラミングはメーカー各社で異なり、プログラム作成を難しくしている一因です。ロボットメーカーを問わないのがROSで、上流の生産管理システムにつながりやすい利点もあります。その新しいバージョンROS2の登場もあって一気に普及する可能性があります」
――2連覇を狙われるわけですね。
「そこまで野心を抱いてはいません。技術的にがんばったね、というような評価をいただけたらいいなと思っています」
株式会社ヤナギハラメカックス
1924年創業、1967年設立、社員約90人(正社員は約70人)
静岡県榛原郡吉田町住吉1541
ユニットのOEM供給を除き自動化装置を年間30台以上納入(うち1億円以上は数件)
釣針づくりをきっかけにして船用ディーゼル機関の製造や、プラスチック射出成形機の製造(組立)からスタートした。5面加工機を3台保有し、工作機械メーカーにATCなどを供給するOEM事業とロボットシステムを供給するFA事業をもつ。老舗企業だがロボットに携わるのはこの10年ほど。機械設計、電機設計、資材調達、機械加工、機械組立、電気配線といった技術を社内にもち、「導入まで一貫体制のノンストップ対応」が可能だ。WRS(ワールドロボットサミット)2020(2021年開催)の「ものづくりチャレンジ」部門で優勝。
(日本物流新聞2025年11月25日号掲載)