インタビュー
ヒロテック 会長 鵜野 政人 氏 (SIer協会副会長〈協会業務部門〉)
- 投稿日時
- 2025/11/25 13:34
- 更新日時
- 2025/11/25 13:45
ロボット約80台ラインを無人化へ
電動化ユニット会社も共同設立
ヒロテックは、設備・金型の製造や部品量産とSIer事業の両輪を備える、日本でも数少ない総合モノづくり企業だ。自動車のドアや排気システムの製造では世界トップクラスを誇り、その量産技術とノウハウをベースに、自動化・FA分野への展開を加速している。ロボット活用や海外展開、そして"無人工場"構想まで、鵜野政人会長に聞いた。

——トランプ関税など、世界情勢が激しく変化する中で、SIer事業の現状は。
「当社はドアやマフラーの量産が中心事業ですから、SIer事業だけを切り離して説明するのは難しいのですが、自動車産業全体を見渡すと、欧州を中心に進んだEVシフトが一段落し、内燃機関やハイブリッドの再評価が始まっています。方向性が定まったことで、開発投資の動きが再び活発化してきました。一方で、米国の政策次第ではメキシコでの生産を米国内に戻す流れもあります。そうなると、メキシコ工場の稼働率をどう維持するかが課題になります。既存ラインの転用や、ドア・マフラー以外の新しい製品領域の受注にも挑む必要があります」
——next事業部を設立し、自動車以外の分野にも踏み出していますね。
「はい。自動車に近い分野からスタートし、農機具メーカーでの自動化実証が始まりました。農機具は生産台数が少なく、モデルごとの差が大きいため、自動車とはまったく異なる自動化思想が必要になります。ドイツでは衛生設備分野での自動化にも挑戦しています。食品業界にもアプローチしていますが、コスト感覚がシビアで価格が折り合わないことも多い。ただ、食品機械分野など、設備単位での提案は可能性がありますね」
——自社のA0ラインは、まさにその自動化ノウハウの象徴と言えます。進捗はいかがですか。
「最終目標は“24時間365日無人で動く工場”です。以前は製品ごとに1ライン必要でしたが、10年前に、1ラインで5種類程度のドアを加工できるようになり、10ラインを3ラインに集約しました。そこからさらに進化し、最新A0ラインでは品種制限を撤廃。これまで4人必要だった工程を1人で運用できるレベルに省人化しました。年内か、遅くとも来年初めには、マツダ様との検証を終え、検査工程人員がいなくても品質を担保し、念願の完全無人化を実現できそうです」

無人化を目指すドア製造の最新ライン。約80台の産業ロボットが密集しても干渉なく稼働
■ワールドワイドに 連携強化
——A0ラインの今後の展開を教えてください。
「78台のロボットを密集配置しながら、干渉ゼロで稼働しています。現在は部品を整列供給していますが、今後はランダムピッキングに挑戦しています。単に部品をつかむだけではなく、治具へ正確にセットする必要があります。カメラで位置を認識し、ロボット動作をリアルタイム補正する。この精度を確立すれば、人の介入を完全に排除でき、生産性が根本から変わります」
——EVシフトに向けた取り組みも進んでいますね。
「マツダ様を含む4社共同で“MHHO Electric Drive”という電動駆動ユニットの生産会社を設立しました。当社にもEV製造用プレス機を導入し、部品製造が始まっています。EVではプレススピードも精度要求もまったく次元が違う。桁違いの精度を要求される金型の製造や交換方法から再構築しなければなりません。これらの経験をFA化や自動組立ライン構築へと波及させたいと考えています」
——グローバルネットワークの強みについて教えてください。
「アメリカ、メキシコ、インド、ドイツなどに6つのSIer関連会社があり、年間で約1400台のロボットを実装しています。量産拠点を含めると15社体制。HWW(HIROTEC WORLD WIDE)の理念のもと、グローバルで技術を共有し、地政学リスクや関税の変化に迅速に対応しています。ヨーロッパで開発した技術をメキシコに、メキシコの治具をアメリカに、インドで製造した装置を欧州へ——という具合に、地域を横断したサプライチェーンを構築し最適製造・供給を実現します」
——AIやロボット分野では今後どのような方向を。
「中国製ロボットの精度も上がってきており、用途に応じて採用を進める考えです。小型部品のハンドリングなどから実証していく予定です。ヒューマノイドも研究対象ですし、実験機も導入します。ただ、今後は、AIと既存工程の融合が重要になる。もし口頭でティーチングできるようになれば、産業用ロボットの概念そのものが変わります。AIを道具としてどう使いこなすかが次の時代のカギです」
——日本ロボットシステムインテグレータ協会の副会長として、業界をどう見ていますか。
「協会を中心にロボットの普及を進め、競争と協業のバランスを取りながら、業界全体の底上げを図っていきたいですね。協会では『SIer's Day』などを各地で実施し、ロボット導入に関するあらゆる相談を受けています。経産省の『RINGプロジェクト』とも連携し、地域の中小企業が自動化にアクセスしやすくなるよう取り組んでいます。ロボットを“特別なもの”から“日常のもの”にしていく。その橋渡しが我々の使命です」
株式会社ヒロテック
創業 1932年 社員数1875人
広島市佐伯区石内南5-2-1
年間納入数 ワールドワイドで約1500台
ヒロテックは、1932年に鵜野製作所として創業。自動車産業の発展とともに大きく成長し、国内外の自動車メーカーを支える製品、生産設備を供給するグローバル企業となる。自社の設備は自社で作るという方針の下、一貫したものづくり体制を構築。そのノウハウを活かしSIer事業を展開している。
(日本物流新聞2025年11月25日号掲載)