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インタビュー

パナソニック エレクトリックワークス社 パワーツールSBU 企画部 市場開発課 課長 林 徹也 氏

投稿日時
2023/04/28 09:00
更新日時
2024/08/19 13:18

組立ライン向け電動工具『Azeloss』始動

組立(Assembly)のロスをゼロにする――この思いが込められた工場の組立作業向け電動工具の新シリーズ「Azeloss(アゼロス)」が今年7・8月に発売される。誰でも安定した品質を担保できるよう、作業者をアシストする機能を搭載。トレーサビリティ管理で品質の可視化もでき、そのデータの分析で生産性の向上にもつなげられる製品までラインアップする。充電工具を得意とするパナソニックとしてはやや異色の工具。狙いや特長を聞いた。

現場を変える次世代ドライバー 

――AC100Vの工場向け電動工具「Azeloss(アゼロス)」を発表されました。新シリーズを投入した背景を教えてください。

「端的に言うと製造業の抱える課題を解決するためです。アゼロスが対象とする工場の組立現場では、ベテラン作業員も高齢化し、女性や海外人材を含めた働き手の多様化が進んでいます。経験の少ない方が増え、技能伝承や育成コストが課題になっているわけです。これに対し我々は誰でも使いやすく、アシスト機能で安定した品質を保てるアゼロスという新工具でアプローチしました。上位機種では無線によるトレーサビリティ管理も可能。品質の見える化や、データの分析から生産性の向上にもつなげます」

――8月に発売予定の「タイプ A/B」と7月発売の「タイプ C/D」の4機種を発表されています。それぞれの違いや特長は。

「まず、使いやすさを向上させる機能は全機種共通。クラッチが作動し作業が終わると判定ランプでOK/NGを表す機能や、本体1台で2つのスタート方式(プッシュ式・レバー式)を選べる機能がこれに該当します。一方、ハイエンド機種であるタイプAB最大の特長は無線によるトレーサビリティ管理。締付本数や良否結果、締付トルク換算値(タイプAのみ)などの作業データをPCへ取り込み、工程の分析や改善に役立てられます。1台の受信機で8本の工具に対応。無線でトレーサビリティ管理ができる産業用ドライバーは、市場を見渡しても珍しいのではないでしょうか」

「またタイプABCでは現場の作業を支援するアシスト機能も複数搭載します。例えばねじの締め忘れ対策として設定した本数を締めたかカウントする機能や、作業のはじめと終わりの回転数を落として締付ミスや部材割れを防ぐ機能です。複数のドライバーを使用して異なるトルクのねじを一人の作業者が締める際、正しい順序でないと工具に電源が入らない順番制御も可能です。締付の良否判定の要素に回転数や回転時間を加えることもでき(タイプCは回転時間のみ)、ねじのかじりや浮きを抑制できます」

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Azeloss(アゼロス)はねじ締めの良否判定をランプで表示。細すぎず太すぎない38mmのグリップ径は、数々の現場ヒアリング・顧客評価でたどり着いたパナソニックの最適解だという

■新市場への挑戦

――4機種の中ではどの機種が売れ筋になりそうですか。

「まずは作業者を支援するタイプCから普及が進むのではないでしょうか。多くの現場ではシンプルな電動ドライバーが使われており、ポカヨケやねじの締め忘れ対策などの作業を支援するドライバーはまだ一般的とは言えません。とはいえ現場の人手不足と技術の継承は課題が大きく、作業スキルによらず安定した品質の製品が作れる体制づくりへのニーズは拡大しています。そこを補完するアゼロスのタイプCはニーズが高いと考えています」

――中長期的にはいかがでしょう。

「長い目線ではトレーサビリティ管理が可能なタイプABの導入が増えると見ています。より高いレベルの品質管理を求める製造現場が増えていくのは間違いありません。例えば取引先から品質管理の説明を求められるケースや、万一の際に自社を守るエビデンスとしてデータを活用するケースが増加すると考えています。タイプABはそこをカバーできます」

――貴社の工具のラインアップではやや異色の製品です。

「たしかに、充電工具を軸としてきた我々にとっては異色の製品ですが、我々には40年以上、工具を作り続けてきたノウハウ・技術の蓄積があり、それを十分に活かせる製品でもあります。また販売面では新市場への挑戦となりますが、パナソニック全体でみれば弊社も顧客でありヒアリングや調査できる工場が数多くあります。そうした強みを活用したいと考えています。工場の組立ラインにおけるポカヨケやトレーサビリティは多くの現場が課題と認識しているものの、まだ対策が打てていない工場が多くあります。アゼロスはそこにご提案したい工具で、展示会でも予想以上の関心を寄せていただいています。このご提案で、日本・世界のものづくりを変えていければと思います」

(2023年4月25日号掲載)