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インタビュー

ヤマハ発動機 ロボティクス事業部長 小林 一裕 氏 
自動車HVに投資回復の兆し

投稿日時
2026/03/31 10:13
更新日時
2026/03/31 10:18

ロボット市場が回復基調をたどる一方、ヤマハ発動機のロボティクス事業はなお慎重な立ち上がりが続いている。背景には、主戦場である小型ロボットや自動車関連投資の戻りの鈍さがある。同社 ロボティクス事業部長の小林一裕氏に現状と打開策を聞いた。

――ロボット市場は回復基調にありますが、貴社のロボット事業を見るとやや時間がかかっているようにも見えます。どのように受け止めていますか。

「確かにロボット市場全体で見ると回復基調にあります。ただ、当社が主力とするスカラロボットなどの小型ロボットは、大型のロボットほど回復の勢いが強くありません。加えて、当社が強みとする自動車領域では、この2年程EVを巡る投資計画の見直しが相次ぎ、案件の立ち上がりが想定より後ろにずれた面があります。その結果、市場全体の回復に比べて、当社の戻りがやや緩やかに見えているのだと受け止めています。昨年12月に開催された2025国際ロボット展あたりからは引き合いの質が変わってきており、具体的な自動化案件が再び動き始めている感触があります」

――EV関連投資が戻ってきつつあるということでしょうか。

「そこは違います。EV関連の投資がそのまま戻ってきているのではなく、一度止めた投資を各社が選別し、続けるべき案件から再始動していると我々は理解しています。この数年のEV一辺倒ではなく、足元ではHV関連の動きが活発です。足元の需要や採算を踏まえて、現実的なテーマから投資が再開されつつあるのだと思います。今後、完成車・車載メーカーの投資が本格化してくると、車載向けのセンサーや半導体など周辺分野にも波及しますので、当社としてはその動きに期待をしています」 

――先行していたリニアコンベアモジュール(LCM)には競合が出てきています。市場環境としては決していい状況ではないのでは。

「確かに、競合が出てきています。ただ、製品単体の比較だけではなく、実運用まで含めた提案力を含め、まだまだ当社に一日の長があると考えています。LCMは、定められた基準点から見て、特定の座標位置に移動するアブソリュート方式を採用しており、原点復帰なしでも位置決めしやすく、制御面でもお客様がやりたいことを構築しやすい強みがあります。加えて、当社には10年以上一緒に現場改革を進めてきたSIerさんとの強固なネットワークもあります。競争相手が出てきたからこそ、当社の製品の強みがむしろ明確になっていると思います」

■物流・協働で新需要切り拓く

――27中計では、ロボティクス事業部が戦略事業の一つとなっています。事業成長に向けて特にFAで期待できる領域は。

「物流・搬送用途向けの活用に期待をしています。大型スカラ『SP-YK1200XG』を活用したパレタイズ工程の自動化ソリューションは、垂直多関節ロボットよりも省スペースかつ低コストで導入できる点を打ち出した製品です。最大可搬質量は50㌔、Z軸のストロークは通常仕様で400㍉ですが、要望に応じて最長1200㍉まで対応します。単純なパレタイズ動作をシンプルに構築できるため、ティーチングをできる人材が限られる現場でも立ち上げやすいです。物流会社だけでなく、飲料や窯業など工場内搬送を含めて業種を問わず引き合いをいただいています」 

――昨年は7軸協働ロボット「Yamaha Motor Cobot」を上市しました。こうした新製品も追い風になるのでしょうか。

「後発ですので、想定する使用用途をかなり絞って、ニッチでも十分ビジネスになる領域を狙って作り込んでいます。一般的な6軸ロボットより1軸分自由度が高いので、狭小スペースでの回り込みや複雑なアプローチがしやすいです。工作機械の狭い開口部からワークを出し入れする用途や、船外機など複雑な形の検査対象の外周を回り込むような用途などに向きます。こうした用途ではAGVやAMRに搭載しモバイルロボット化するニーズも想定されるため、コントローラーを非常にコンパクトにすると共に、制御電源もDC48Vとしバッテリーを共有化しやすい設計となっています」

――事業部内でのシナジーも考えられそうですね。

「その通りです。当社はFAだけでなく、SMTの大きな市場と、半導体後工程向けの納入チャネルを持っている。そこにFA商材を組み合わせながら、製造の前後工程まで含めて自動化を提案する『ワンストップスマートソリューション』を進めています。実際に、実装ラインだけでなく、その周辺も自動化したいという声は多く、引き合いも増えています。単体の機械を売るだけではなく、工程全体の課題にどう応えるかが、今後の成長の鍵になると考えています」

――では、今後の展望をお聞かせください。

「我々が目指しているのは、単に人をロボットに置き換えることではありません。人がより付加価値の高い仕事に集中できるようにし、きつい作業を減らしながら、生産や物流の現場全体を強くしていくことです。なので、完全自動化だけが答えではなく、人と機械の最適な役割分担にも価値がある。自動化の検討する最初の段階からアフターフォローというところまでをしっかりサポートし、お客様に最初に相談される会社になっていきたいと思っています」

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物流現場で活用が進むスカラ型のパレタイザー


生成AI活用


同社では、画像処理やデータ分析ですでにAI活用が進み、製品化などもされている。一方で、生成AIの活用はまだラボ段階だという。理由は、製造や物流の現場で重要なのが「新しさそのものよりも、安定して使い続けられること」(小林氏)だからだ。