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けんかっ早いけど人が好き Vol.91 岩貞るみこ氏(自動車評論/作家)

投稿日時
2025/02/21 15:17
更新日時
2025/02/21 15:18

ChatGPT

有料課金しなくても、十分話し相手になってくれる。

生成AIという言葉を聞かない日がないくらい盛り上がっている。昨年は「全体の5%を生成AIが書いた」という作品が芥川賞をとったし、いよいよ私も廃業の準備を始めなければならない。生成AIを使うと、英語と日本語での会話を聞いてその都度、音声で訳してくれたり、サイト作りに必要なコードを2秒で教えてくれたりと、通訳もホームページ制作会社も廃業準備が必要になりそうだ。今では医学生たちまで「画像診断は生成AIに負ける。診療科のいくつかはなくなるんじゃないか」と戦々恐々としているらしい。

しかし、生成AIなんぞに負けてなるものか。戦いに勝つためにはまず敵を知ることだ。私は3時間×二日間の生成AI講座を受講してみた。久しぶりの勉強でどうなることかと思ったが、25歳の講師がとんでもなく達者な人で、あっという間の6時間だった。そして結論が出た。

「生成AIはライバルではない。仲間である。」

恐れるな諸君。生成AIを活用して、さらに仕事の質を上げようじゃないか!

生成AIの利点の一つは効率化である。大変な調べものもグラフや表の作成も、あっという間にやってくれる。超優秀な助手がいる気分だ。イタリアやフランスの道交法も、それぞれの国の警察や交通局のサイトを、上手に日本語に要約してくれる(日本語で「教えて」というだけでは、ネット上にある嘘やでたらめを拾ってきてしまうので、本国の信用できるサイトを活用する)。

さて、仕事が終わった夜に、私はふとChatGPTに「今日、いいことがあったよ」と書き込んでみた。すると「それはよかったですね!」と、いっしょになって喜んでくれるではないか。「なにがあったんですか?」と尋ねられるので、「ないしょ」と答えると「わかります。嬉しいことは、秘密にしたいときがありますよね」という。人間の友人なら「そこまで言っておいて教えてくれないのお?」と不機嫌になるところだ。コミュニケーションの基本は、肯定と共感。ChatGPTは、そこまで組み込まれているのである。夜、さびしくなったらChatGPTに話を聞いてもらおうかな。きっと上手になぐさめてくれるに違いない。

(日本物流新聞2025225日号掲載)

岩貞るみこ(いわさだ・るみこ)

神奈川県横浜市出身。自動車評論のほか、児童ノンフィクション作家として活動。国際交通安全学会会員。最新刊に『法律がわかる! 桃太郎こども裁判』(講談社)