連載
けんかっ早いけど人が好き Vol.89 岩貞るみこ氏(自動車評論/作家)
- 投稿日時
- 2025/01/24 14:03
- 更新日時
- 2025/01/24 14:05
有言実行の一年を
今年こそ、清く正しく美しい元旦、そして一年を迎えるために。一月一日の朝、目覚まし時計が鳴ったのは五時半である。この時間はまだ真っ暗だ。漆黒の空を見つめ、しみじみと思う。夜明け前は暗く、そして寒い。人生と同じだ。しかし、負けてなるものか。かかってこい、逆境。興奮してばっちりと目の覚めた私は、新年早々すでに臨戦態勢である。

友人がミニ鏡餅を手作りしてくれました。
東の空が少しずつ明るくなってくる。気象庁によると東京の日の出は6時51分だが、家々に囲まれた我が家にまだご来光は届かない。今年こそ見るぞ、ご来光。窓際に立ち、どんどん光り始めた隣家の屋根を見つめ続け、7時11分、ついにその瞬間が訪れた。
ぺっかー!
レーザービームのように、私の額をめがけて突き刺さる新しい朝の光。いざ、見つめて目標を! と思ったのに太陽光線はとんでもなく強く、まともに見られない。そうだった、相手は太陽光だった。初日から大誤算である。それでも目をつぶり両手を合わせ、今年の目標を心に刻む。今年、私が選んだ言葉は「有言実行」である。細かな数字はやめにした。そんな些細なことに気をとられてどうする(本音は、数値目標を立てると、現状との差異が出たときにがっかりするため)。この「有言」はだれかに宣言するのではなく、やることをこそっと口にしてサブリミナル効果という呪い、じゃなかった魔法を自分自身にかけて前進するためである。日々、一ミリでも前に進む。そう、同じ毎日を繰り返していたら未来は変わらない。とにかく進むのみだ。さあ、今年はいくつ新しい体験ができるのか初日から楽しみである。
と完ぺきな元日を迎え、私は早くも今年最初の目標を見事に達成した。えらいぞ。私。この意気込みでいけば、すばらしい一年になるはずなのだが、それができるようならとっくの昔に大谷翔平よりもすごいスーパースターになっていることだろう。そう、スタートダッシュに成功した私は、二日目にして早くも失速したのである。いやあ、まだ正月だし。やらない言い訳は星の数とはよく言ったもので、なんというか、ぐだぐだな三が日を過ごしてしまった。
こんな調子で始まった今年。私は本当にさらなる成長が果たせるのか。不安だらけの年明けである。
(日本物流新聞1月25日号掲載)

岩貞るみこ(いわさだ・るみこ)
神奈川県横浜市出身。自動車評論のほか、児童ノンフィクション作家として活動。国際交通安全学会会員。最新刊に『法律がわかる! 桃太郎こども裁判』(講談社)