連載
けんかっ早いけど人が好き Vol.88 岩貞るみこ氏(自動車評論/作家)
- 投稿日時
- 2025/01/10 09:37
- 更新日時
- 2025/01/10 09:41
新たなる一年の始まり
昨年末は、いつになく多くの人に会った。コロナ自粛以来、忘年会はめっきり減ったけれど、「年内に会いましょう」という小さなお誘いをたくさんいただいたのだ。ランチにディナーにティータイム。私の消化器官はブラック企業さながらの長時間労働が強いられ(でも楽しいので気分はホワイト)、月間摂取カロリーは跳ね上がる。正月太りという言葉があるけれど、体重増加は年末から始まっているのである。
こうしてお会いした方々の口から出てくる言葉といえば、一年は早いわね~、である。あっという間だ。そして、その言葉をかみしめるたびに、まるで成長していない自分にうんざりするのである。今年は英語をやり直そう。今年こそ本を月に十冊読むぞ(資料本はノーカウント)。あれやこれやと年初に目標を定めるものの、結局、二月の豆まきが終わるころには目標をたてたことすら忘れてしまう。V字開脚ができるようになるという目標を立てたのは10年以上前だというのに、現在、前屈マイナス26センチだ。たぶん私は床に指先がふれないまま一生を終えることになるだろう。
元日に立てる計画、かかげる目標。コツコツと着実に継続的に(ここ大事)行なうつもりなのに、なぜ挫折するのか。そして薄々わかってきたことがある。一年の計は元旦にありだというのに私の元旦は、実にぐだぐだなのである。そもそも大晦日もそれらしいこともしない。年越しそばは、「細く長く生きるなんてまっぴらだ。太く短く上等!」とばかりに食べた記憶すらない。いつからか紅白歌合戦も見なくなり、とっとと風呂に入ったら除夜の鐘を待たずに寝てしまう。当然、初日の出を拝むどころか、太陽が空高く上り切ったころ窓越しに新年最初の太陽かとちらりと見る程度。そんな敬意の欠片もない元旦(とはもはや言えないお昼ごろの行為)の迎え方をしながら今年の決意を唱えたところで、一年間、思いが持続するはずがないのである。
さて2025年。この原稿を書いているのは年末なのだが、今、私の胸の中では、今年こそ、今年こそは初日の出の瞬間を見ながら新たな目標を心に刻もうと鼻息を荒くしている。いつも計画倒れの私が初日の出に間に合ったかどうかは、次号でお伝えしたい。
(日本物流新聞2025年1月10日号掲載)
岩貞るみこ(いわさだ・るみこ)
神奈川県横浜市出身。自動車評論のほか、児童ノンフィクション作家として活動。国際交通安全学会会員。最新刊に『法律がわかる! 桃太郎こども裁判』(講談社)