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けんかっ早いけど人が好き Vol.76

焦げトラブル

むむ? なんだこの匂いは。キッチンから異臭がしてきた。そして、私にはこの臭いに覚えがある。そうだ、たしかこれは以前カレー鍋を焦がしたときだ......えっ、それって? そう気づいたとき、台所からガッシャン!という大きな音がした。なにーっ?

新しくやってきたトースター。順調に活躍中。

慌ててキッチンに走る(走るというほど広くない)。ぱっと見ても異常はない。コンロの上にはなにも乗っていないのだ。しかし、臭いは強烈に漂っている。臭いの方に目を向けると、トースターがある。よく見るとほこり除けの蓋(専用部品)が黒く焦げているではないか。蓋をはずすと、もわわ~と焦げ臭さが百倍になって襲ってきた。なぜなぜ、どうして、トースターが?

我が家のトースターは、扉を手前に開いてパンを網に乗せるのではなく、昔ながらの食パンをタテに2枚入れるタイプだ。ゆえに、食パンを焼く以外なにもできない。でも、いいのだ。私の毎朝の楽しみは、こんがり焼いた食パンにジャムとスライスチーズをのせたもの。ゆえに、外はカリッと中はもちっと焼きあがるこのタイプがお気に入りなのである。しかし今、目の前でそのトースターが大暴走している。そう、熱くなったままスイッチが切れないのだ。パンを入れる部分をのぞきこむと、真っ赤になった熱線が見える。先ほどのガッシャンという音は、かぶせてあった蓋が、熱さに耐えかねて飛びあがった音だったのだ。

とにかく、スイッチを切らなければ。あちこちいじってみるけれど、熱線の色は変わらない。そして、あの、喉をヒリヒリさせるような焦げた臭いも収まらない。私は引きちぎるようにコンセントを抜いた。しばらくすると、トースターは我に返ったようにおとなしくなった。一件落着である。ところが翌朝、トーストを焼いてみると、ふたたびあのヒリヒリ臭が立ち込めてきたではないか。トーストも喉が痛くなるような臭いがくっついている。ダメだこれは。かくして、新しいトースターをお迎えすることになった。

それにしても、このところ焦げ騒動が続いている。これはなにかの予兆なのか。神さまが注意信号を送ってきてくれているのか? 今の時代、気を付けるのは火の元だけじゃない。電気の元にも要注意だ。気を付けよう。

2024710日号掲載)

岩貞るみこ(いわさだ・るみこ)

神奈川県横浜市出身。自動車評論のほか、児童ノンフィクション作家として活動。国際交通安全学会会員。最新刊に『法律がわかる! 桃太郎こども裁判』(講談社)