「大量にオーダーミスしちゃったから食べてくれない？」

なんでも、百個買うつもりが誤って百個入りの箱を百個、注文してしまったのだという。賞味期限のある食品ゆえに期間内にさばけず、私の元にも送ってきたという。

「10年分のお中元だと思って」

と友人は笑い、私も、御礼返しはしないよと冗談を言いつつ、ありがたくいただいた。

たまにSNSでも「大量に発注してしまいました！」「助けてください！」という呼びかけとともに、プリンやメロンパンが大量に並んでいる写真を見かけるが、正直なところ私はこういうミスを鼻で笑う性格である。ちゃんと確認すればこんなことにならないだろうに。

しかし先日、我が家に届いた某通販会社の箱を見て思考回路が緊急停止した。なんだこの巨大な箱は？　力任せに箱をべきべきと開けると中から大量の《トイレのお掃除シート（詰め替え用）》が現れた。買った。たしかにこの通販サイトで購入した記憶はある。しかし目の前のこの量。こんなに頼んだ覚えはないぞ。慌てて購入履歴を確認する。そしてそこにあったのは、セット買いをすると安くなるという広告に浮かれて３箱セットを３つ頼んだつもりが、24箱セットを３つ頼んだ事実だった。なんでこんなことに。

私は途方にくれた。どうするんだ、これ。友人たちに分けるか？　いや、それもなんだかなあだ。なんたってトイレのお掃除シートである。生活必需品なので使ってはくれるだろうが、郵送代の方が高くつく。幸い消費期限はない。私は腹をくくった。仕方ない。自分で使おう。ひと箱12枚入りだが、一枚を半分に切って使うため（中央に切り取り用の線がついている）ひと袋24回分あることになる。それが24箱×３つということは、電卓をたたくと毎日使っても5年近くは新規購入しなくてすむという数字がはじきだされた。

これからは、SNSでこうした投稿を見かけても、鼻で笑うのはやめよう。なんなら消費に協力したいくらいだ。人間とはこういうミスをする生き物なのである。反省とともに毎日のトイレ掃除、がんばります。

（2022年11月25日号掲載）