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けんかっ早いけど人が好き Vol.116 岩貞るみこ氏(自動車評論/作家)

投稿日時
2026/03/10 16:18
更新日時
2026/03/10 16:21

防災袋の点検

3月11日と9月9日。東日本大震災の日と救急の日は、私の防災袋の点検日である。一年に一回は点検をと呼びかけるところが多いが、私はそれでは間に合わないと思う。だって世の中は目まぐるしく変わるし、私はどんどん老いるんだもの。

一昨年、スマホを買い替えたときは充電口がCタイプに変わっていて、これまでの充電ケーブルが使えずあわてて入れ替えた。スマホの利用頻度が増えるということは、電気の使用量も増えるわけで、太陽光発電できる大型のポータブル充電器を手配した。生活スタイルの変化は激しいが、世の中の動きに合わせて便利製品も登場してくるからありがたい。

ビスコの保存缶。災害用伝言ダイヤルもある。

私の老いといえば、乱視がひどくなり(人はそれを老眼と呼ぶ)眼鏡を作ったときは、これも入れておかなければと百均で虫眼鏡を買い求めた。もっとあわてたのは歯列矯正をしていたとき(審美目的ではなく噛み合わせ治療)、歯を動かす痛みで防災袋の非常食が食べられないことに気付いたときだ。危ない。水で過ごすところだった。しかし、世の中は優しい。高齢者向けの『噛まずに食べられる』レトルトパックを見つけ、防災袋にため込んだ。

使用期限や消費期限のあるもののチェックも欠かせない。乾電池。整腸剤に頭痛薬。マスクも2年たつと品質が落ちるらしいから入れ替える。そして、カードや電子マネーが使えないときのために現金も入れてあるのだが、点検で出したときに福沢諭吉と目が合った。諭吉がすぐさま使えなくなることはないだろうが、どこでなにがあるかわからない。渋沢栄一に入れ替えておく。

防災袋の中身は人により大きく変わる。甘いものなしでは生きていけない私の場合は、お菓子がぎっしりとつめ込まれた多幸感あふれる仕様になっている。もちろんチョコレートはローリングストックよろしく常に賞味期限内で入れ替わる。ただ、9月の点検時に、5年の長期保存ビスコ缶の期限が切れかけていた。よって、3月は入れ替えである。

今年の3月11日は暖房を消し、このビスコと缶詰で一日を過ごそう。忘れっぽい私はすぐに教訓を忘れてしまう。でも、こうした準備と経験が、いざというときに活きるのである。

(日本物流新聞2026年3月10日号掲載)

岩貞るみこ(いわさだ・るみこ)

神奈川県横浜市出身。自動車評論のほか、児童ノンフィクション作家として活動。国際交通安全学会会員。最新刊に『こちら、沖縄美ら海水族館動物健康管理室。』(講談社)