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けんかっ早いけど人が好き Vol.105 岩貞るみこ氏(自動車評論/作家)

投稿日時
2025/09/25 13:07
更新日時
2025/09/25 13:09

恐るるに足らず!

とんでもない暑さが続く魔夏(もう漢字はこれにしてほしい)、推し活に行ってきた。私は、推し活は一人で行くと決めている。会場では誰とも話をしないでにやにやするという根暗な性格だし、思う存分推しを見つめ、推しの名前を叫ぶには一人の方が都合がいいのだ。ただ、推しには観客が肩を組んで頭をふる曲があるのだが、一人だと肩を組む相手がいないのは残念だ。

大活躍した保温力抜群のコメリのソフトクーラーバッグ。

イベント当日、最高気温はとんでもない数字を叩き出していたが、ここまできたらもう引き返せない。保冷力抜群のコメリ様クーラーボックス(しかも安い)には冷凍ペットボトルを3本入れである。きっと大丈夫。そして会場でわかったのだが席は通路脇で、脱落したらすぐに運んでもらえる席だった。主催者、年齢確認でもしたのか? いや、逆にありがたい。ちなみに左隣は20代の仲のよさげなカップルだった。うらやましいぞ。

開始を待っているだけで汗だくで、今、倒れたら後悔してもしきれんぞと思った瞬間、現れた推し! ぎゃー、かっこいい! 来てよかった! 本気で泣きそうになった。そして、セトリ(セットリスト。曲順)はどんどん進み、Tシャツは絞れるほど汗を含んだころ、ついに肩を組む曲のイントロが始まった。そのときだ。がっと右肩をつかまれた。なんだ? 右は通路で誰もいない。そう、左隣にいたカップルの男子に肩をつかまれたのである。そうきたか! となれば私も彼と肩を組むしかあるまい。腕をまわす。彼女と三人で一列になったまま肩を組み、曲に合わせて首をふりまくる。私たちの前列にはずらりと並んだ体育会系の女子大生たちが、これまたすごい勢いで首をふっている。組んだ肩からは男子の体温が伝わってくるし、まるで私のいるまわりが熱源になったみたいな暑さだ。とんでもなく暑い! でも楽しい! 曲が終わったときは周囲のみんなとハイタッチ、一期一会の最高の笑顔である。

体中の水分が飲んだ水とぜんぶ入れ替わったんじゃないかと思うくらいだったけれど、めちゃくちゃ楽しかった。ありがとう、隣のカップル。まわりの女子大生。そして、あれほど心配していた夏のイベントは、恐るるに足らずだった。絶対にむりと諦めていた過去の自分を叱り飛ばしたい。来年も絶対に来よう。魔夏、最高!



(日本物流新聞2025年9月25日号掲載)

岩貞るみこ(いわさだ・るみこ)

神奈川県横浜市出身。自動車評論のほか、児童ノンフィクション作家として活動。国際交通安全学会会員。最新刊に『こちら、沖縄美ら海水族館動物健康管理室。』(講談社)