連載
けんかっ早いけど人が好き Vol.103 岩貞るみこ氏(自動車評論/作家)
- 投稿日時
- 2025/08/25 09:27
- 更新日時
- 2025/08/25 09:29
青い鳥文庫ふたたび
小中学生の夏休み読書感想文にぴったり! というふれ込みで、8月も拙著『キリンの運びかた、教えます』が青い鳥文庫の仲間入りをさせてもらった。書店に並んでいるのを見るとうれしくなり、周囲の親子連れに「買って!」と念を送ってしまう。この本は、文部科学省の社会保障審議会推薦児童福祉文化財に選ばれたのだが、私には不釣り合いな評価に今もなおドッキリ企画ではないかと疑っている。

単行本とは、イラストや文字の並べ方が少しずつ違います。
私の本のテーマは命の大切さと仲間との連携だが、加えて半径五百メートルで生活している子どもたちにいろんな仕事を伝えたい思いがクロスしている。そんななか、「題材はどうやって決めるんですか?」という質問をよくもらう。よほど緻密な調査分析のコツがあると思われているのだが、実際のところは単純に私と編集担当さんの勘である。私が面白そうと思ったり、担当さんが「これ、どうかな」と言ってきたものを、ほとんど即決で決めてしまう。
この『キリンの~』も、そうだった。ある朝、ぼーっとテレビを見ていたら、日本通運さんのCMが流れてきた。埼玉にあるこども病院の引っ越しである。この病院には私が敬愛してやまない小児救急の先生がいるのだが、「その先生に会えるかも!」というヨコシマな気持ちが暴発して次はこれでと提案し、見事、企画が通過したのだ。ただ、引っ越しだけだと子どもたちが飽きるので、子どもに興味がありそうな別の題材を加えて三部作にしようということになった。では、何にするか。
重機ラブな私は、機関車や鉄道を運ぶ現場に行きたいと駄々をこねた末に妥結。その代わり、もう一つは少しソフトなものにすべしと言われ、もごもごやっているうちに当時、サブでついてくれていた新入社員の担当さんがキリンはどうでしょうと提案してくれた。ほお、あの背の高いキリンってどうやって運ぶんだろう? 私の興味もむくむくとわき決定したという次第。
こうしてみると結局、私が会いたい人や見たい現場で題材を選んでいる気がする。いいのか、こんないい加減なことで。いや、二十年こうしているので、まあいいか。本を書くときの精神年齢は15歳だし。きっとこれからも、勢いと勘となりゆきで題材を選んで本を書くんだと思います。
(日本物流新聞2025年8月25日号掲載)

岩貞るみこ(いわさだ・るみこ)
神奈川県横浜市出身。自動車評論のほか、児童ノンフィクション作家として活動。国際交通安全学会会員。最新刊に『こちら、沖縄美ら海水族館動物健康管理室。』(講談社)