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UR都市機構、中宮第3団地をリノベーション

投稿日時
2023/07/10 14:41
更新日時
2024/08/19 13:17

大阪府内にある同タイプ住戸600戸へ横展開も

独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)が建設した昭和30年代の団地は建て替えが進むが、昭和40年代建設の団地は30万5350戸あり、ストック全体の約43.2%(令和3年時点)を占める。少子高齢化の中、すべて建て替えるのは現実的ではなく、リノベーションでの活性化を模索している。

中宮第3団地

昭和44年~45年に建てられた中宮第3団地(大阪府枚方市)の一室をリノベーションしモデルルームとした。

「居間心−imagine」と銘打ち「住戸の核であり生活の中心である『居間』に焦点をあて、シンプルかつ自由度の高い贅沢な空間とすることで、住み手のimage次第でさまざまな活用を可能とする『イマの間』を提供」(UR都市機構)するという。

類似した3Kの間取りがUR都市機構が管理する住戸には多い。今回のリノベーションの目的の一つは、横展開可能な汎用性を持った部屋を作ることだ。

団地の部屋のリノベーションで多く行われる洋室化よりコストを抑え、団地の歴史を残しつつ改装は最小限にとどめた。またふすまを取り払うなどの改装は、退去後の原状回復費用の低減にもつながる。

この型式は建設当時、ファミリー世帯の入居を想定していたが、現在の感覚ではファミリー層には手狭だ。洗濯機の設置を想定したスペースや設備がなく、後付けの設備で対応している状態だ。

■ふすま撤去で環境負荷低減

そこで3つのポイントを中心に改装を実施し3Kから1LDKに間取りを変更した。ターゲットも1人暮らし、または2人暮らしを想定。リモートワークなどの新しい働き方を取り入れ、最寄り駅からのアクセスに大きく左右されない層に訴求していく。

まず、ふすまをすべて撤去してLDK化を行った。間仕切りのふすまをすべて無くしたことで、自由空間として贅沢な広さを確保した。押入れのふすまも撤去し作業スペースにした。ふすまがなくなることで、退去時に発生するふすまの廃棄もなくなり環境負荷を減らせた。

ランドリーとクローゼットを一ケ所へ集約し、居間空間(和室2間)を広々と使うことができるようになった。

他に、飾り棚や収納ボードを造作可能な付け柱を新設し、住まい手の自由な発想を活かせるようにした。付け柱については原状回復不要とした。DIYを取り入れた新しい住まい方を提案することで、他の賃貸物件との差別化を図っている。

今リノベーションにより入居率アップに加え、改良前住戸の家賃から5%増を確保し収益性の改善にもつなげる。

「まずモデルルームとして改装。同コンセプトの部屋で入居者を募集する。実際の生活で生じる課題などのフィードバックも受けながら、さらに改善していく場合もあるだろう。今後、昭和40年代管理開始団地の3Kを中心に、同タイプのリノベーションを実施していきたい」(UR都市機構大阪エリア経営部企画課水取郁彰さん)とする。

今年度は、大阪府下複数団地で総計20戸程度供給予定だ。需要を見ながら、供給団地や間取りを拡大していく。なお大阪府下には昭和40年代管理開始の団地が43246戸あり、このリノベーションが可能な型式の部屋は約600戸ある。今回のリノベーションを手始めに、ほかの型式に横展開できる部屋の開発も視野に入る。

Rの時代02.jpg

(【左】リノベーション前、【右】リノベーション後)

2023710日号掲載)