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カンケンテクノ、半導体希ガス初のリサイクル装置
- 投稿日時
- 2026/02/13 09:10
- 更新日時
- 2026/02/13 09:12
9割再生で環境負荷・SCリスク低減
自動車やスマートフォン、家電などハイテク化する民生品の進化を支えている半導体。生成AIの誕生でその可能性や重要性がより大きなものとなる一方、製造に伴う環境負荷の増大やサプライチェーン(SC)の脆弱性は、半導体業界ひいては世界経済・社会の成長や持続可能性を左右するリスク要因ともなっている。
大気環境保全装置を手掛けるカンケンテクノ(京都府長岡京市)は、排ガス処理で培った技術を軸に、半導体製造における外的リスクを低減する提案を強めている。その象徴が、2024年の省エネ大賞で経済産業大臣賞を獲得したオンサイト型エキシマレーザー用Neガスリサイクル装置「KR-NPf」だ。

オンサイト型エキシマレーザー用Neガスリサイクル装置「KR-NPf」
開発のきっかけは、22年のロシアによるウクライナ侵攻にある。同地域は、露光装置のレーザー光源に不可欠なネオンガスの主要産出地の一角であり、そこで起こった紛争は世界的なガス価格の高騰と入手不安を顕在化させた。在庫の積み増しや調達先の分散は即効性があるものの、輸送や保管にかかるコスト、環境負荷など別の課題も生む。地政学リスクが複層化する中で、排ガス処理に実績のある同社に声がかかった。
KR-NPfは、露光装置から排出される使用済みネオンガスを回収し、ガス中に残るコンタミネーション(不純物)を除去したうえで、レーザー光源で使用できるレベルに再生する装置。これまでにもリサイクルは試みられてきたが、濃度制御に難所があった。
「露光装置に使用されるネオンガスには数ppmだけキセノンが含まれている。その配合は露光装置の性能を左右する。新品のガスと同等品質に仕上げるため、ガス中に数%レベルで含まれるネオンと、その100万分の1程度しか含まれないキセノンを精緻に調整しながら注入し、狙い値を合わせ込む必要があった」
カンケンテクノの開発担当者はこう振り返る。「さらに、現場が求めたのは『再利用できる』ことだけでなく、『従来と同等品として扱える』ことであった」と。そこで同社は、再生後のガスが新品と同等であることを示すため検査工程まで装置に組み込んだ。これにより、レーザー光源メーカーからのサーティフィケート(認証)を取得し、新品のガスと同様に製品保証が可能なガス状態にまで高めた。
「リサイクルで精製されたガスの認証取得はおそらく前例がない。デバイス、露光装置メーカーなどの協力も得ることで、プロセス全体で問題がないとの評価が得られた」
■柔軟性が競争力に
結果、従来はすべて廃棄処理されていたネオンを約9割以上回収・再生できるようになった。これによりネオンガスの購入量や輸送回数を大きく抑え、地政学リスクと環境負荷の低減を両立する装置を作り上げた。「発売からまだ2年程だが、国内ではすでに生産ラインに導入されている。加えて海外展開の話も進んでいる」(同社担当者)という。
さらに、排水処理のように工場外に大型のインフラ設備を設けて集中処理するのではなく、装置ごとに一対一で処理を施すオンサイト型とした。これにより、将来の生産計画に応じて柔軟かつ段階的な導入が可能となっている。
「半導体市場は変動が大きい。ピーク時以外には遊休状態にある設備も出てくる。その際、集約処理するタイプの設備では無駄が多くなる。オンサイト化することで、需給バランスの変化にも追従しやすい」
半導体の競争力は、これからもチップ性能の追求が中心であろう。ただ、環境変動やSCの不確実性が共に高まるなか、外部リスクへの柔軟性が産業の持続性を静かに左右し始めている。カンケンテクノの排ガス処理技術はその基盤となっていきそうだ。
(日本物流新聞2026年2月10日号掲載)