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カツミ工作所、誰でも受け入れる歯車の「町医者」
- 投稿日時
- 2026/01/14 10:17
- 更新日時
- 2026/01/14 10:20
一流の歯研や測定機、80年代から導入

2023年に導入したクリンゲルンベルグの円筒歯車研削盤「RAPID 1250K」を紹介する板倉輝幸社長
[歯車製造]
大阪府東大阪市
スイスのライスハウァー製歯車研削盤や独クリンゲルンベルグの歯車測定機、歯車研削盤を多数もつ。それも社員18人の東大阪の町工場がだ。創業から15年後の1984年頃からそれらを導入し続けている。
「ウチは他の歯車メーカーや鉄工所と何のしがらみもない。独特やと思う」
開口一番、カツミ工作所(1969年創業)2代目社長の板倉輝幸氏は自社についてそう話す。それにしても一流のマシンを80年代から設備してきたのはなぜか。
「当社は父である先代が大学を出て、プーリー(ベルトを使って動力を伝えるための円盤状部品)が儲かると聞いて25歳で立ち上げたベンチャー。高級機を入れたのは、つき合いのある印刷機械メーカーから『これからは歯研磨や』と聞いて触発されたから。最新機しか頭にない人だった」
クルマ好きがフェラーリを買うような感覚で機械を導入したという。ただ92年にクリンゲルンベルグのNC歯車測定機「PNC130」(最大ワーク外径1300ミリ)を導入した時は周囲から「気が狂った」と言われたそうだ。
「当時で億超えだったので。今でこそ測定機の重要性が知られるが、当時は買うなら加工機であり、測定機に重きが置かれていなかった。大手の重工メーカーならいざしらず、町工場でこんな機械を持つのはウチくらいだったと思う」
■歯研ノウハウが武器に
同社は主に国産の旋盤7台、マシニングセンタ3台、ホブ盤9台、歯切盤3台、ワイヤ放電加工機1台……と焼入れ炉以外の設備を揃え、直径3ミリ~2メートルの歯車を年間5千個ほど製造する。顧客の業種はさまざまで船、電車、航空機、自動車など。1、2個の単品加工が大半で、100個つくることは年に一度あるかないか。板倉社長は「大きな歯車メーカーさんが総合病院なら、ウチは町医者。全部診られるし、誰でも受け入れる」と言う。
高級機を設備することはウリになる。そう話を向けると「僕は加工できるかどうか、求められる仕事をこなせるかどうかを基準に設備を入れている。それさえ満たせれば中国製の機械でもなんでもいい」とこだわりがない。
こだわるのは歯研で、ニーズに合わせて歯車同士をかみ合わせるようにして削る創成研削と、一歯ずつ削る成形研削を使い分ける。「知識があるので、何に使われる歯車なのかを聞いて適切に応えられる。かみ合いの音を極力抑える加工法をチョイスし、単品から社内で製造できる」
また汎用切削加工機を使って自社製の1本バイトでウォームギヤ・ウォームホイールをタンデンシャル加工(刃物を歯の接線方向から当てて高精度に削る)できることもウリだ。「5軸機でできるのではって? 汎用機なら安いし、5軸より加工精度がいい」
課題はあまりないようだ。同社は人手不足を感じていない。「出会いと運に恵まれていて、みんなが助けてくれる」と素直に話す。少し考えてから板倉社長はこう付け加えた。「僕がどのようにして引退するか。60歳まであと8年、その間に何をしなければならないか。それだけを考えて20代から仕事している」と笑う。

焼入れ炉以外の設備を揃える石切工場。同じ東大阪市内に吉田工場もある。
(日本物流新聞2026年1月10日号掲載)