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日下歯車製作所、グリーソン歯形のスパイラルベベルギヤに特化

投稿日時
2025/10/28 10:14
更新日時
2025/10/28 10:17

歯車ひと筋の一貫体制

傘のように傾斜した形をしたかさ歯車(ベベルギヤ)。回転の方向を90度変えることができ、自動車や輸送機器、工作機械などに使われる。だが、ひと口にベベルギヤと言ってもこのギヤをよく見ると形が単純でない。歯は緩やかに曲線を描き、歯の高さや太さが一定でない。

グリーソンの歯切盤が奥まで並ぶ本社工場

[歯車、機械部品製造] 
愛知県豊田市

「グリーソン歯形と言って、グリーソンの歯切盤でないと削れない」

日下歯車製作所(1951年創業、社員159人)営業部兼管理部の山田慎太郎次長がそう教えてくれた。「ベベルギヤならなんでもできるだろうと、比較的一般的なものを依頼されることがあるが、逆にそれは当社では削れない」と言う。

グリーソン歯形のスパイラルベベルギヤの仕事をこなすには1億円以上するグリーソンの歯切盤を設備するよりほかない。まったくうまい仕組みをつくったものだと感心する。

だから同社の本社工場に入ると、文字どおり息を呑んだ。

「Phoenix 175HC」(最大ワーク外径175㍉)などグリーソンの歯切盤だけで10台以上が整然と並ぶ。そのそばの2台の真っ黒な外観のクリンゲルンベルグ製歯切盤「OERIKON(エリコン)C30」(同280㍉)は2023年3月の導入に続き、今年9月上旬に入れたもの。「最近、クリンゲルンベルグ機でもグリーソン歯形のギヤをドライで削れるようになった」(山田次長)からだ。これもやはり1億円以上するが、2台目の導入を決めた理由はバックアップだ。「カッタやヘッドなど消耗品の費用もかさむ」と漏らすも、ほかで代用できない機械は複数台セットでの導入が基本だという。

■製造ライン想定した評価も

本社工場は新幹線の「三河安城駅」から車で20分の小高い住宅街に立地する。ここから車で約1時間の距離にある小原工場と、検査・出荷拠点として久岡倉庫ももつ。主力のスパイラルベベルギヤ(生産数の3割弱、生産額では5割超)や平歯車(生産数の4割)を中心に直径10~270㍉の歯車を月に20万~25万個(約800種)生産する。用途は輸送機器(自動車、バギー、船外機など)、建機・油圧機器、減速機(ロボット、産業機械)、農機、電動工具など多岐にわたるが、「コロナ禍明けの反動で一昨年の年末から昨夏は一部休業するほど景気が悪かった。レジャー用品やEVブームに伴うロボットの需要減が大きい。今年度は少しずつ戻ってきているが、トランプ関税の影響でどうなるか」と話す。

同社の強みは材料切断→熱間鍛造→レース(旋削)→歯切→シェービング(歯面を滑らかに整える)→熱処理→仕上げ研磨、のすべての工程を自社で完結する一貫体制だ。「熱処理後の歪みもその場で見られ、製造ラインを想定した評価ができる」と歯車ひと筋のメーカーらしい利点をあげる。この一貫体制を頼りに先日、国内自動車メーカーの米国の試作部隊から4人が日下歯車に1週間滞在し、歯形に伴う問題を解消しようと加工の微調整を行ったという。

今後は高付加価値化を目指し、スパイラルベベルギヤにさらに選択集中すべきか。創業から74年の同社の悩みどころだという。

4面【挑む!加工現場】日下歯車製作所P2.jpg

右からバギー用、農機具用、自動車用のスパイラルベベルギヤ

(日本物流新聞2025年10月25日号掲載)