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ガルデリア、微生物の活用でレアメタル回収に挑む

投稿日時
2025/10/01 15:10
更新日時
2025/10/01 15:14

レアメタルの需要が急増する中、日本のディープテックベンチャー、ガルデリアが画期的な回収技術を提案している。同社が開発中の極限環境微生物を活用した金属回収システムは、ランニングコストに優れた環境に優しいソリューションとして世界中から注目を集めている。

同社の技術の核となるのは、「ガルディエリア・サルファリア」と呼ばれる硫酸性温泉紅藻。この極小の藻類は、火山地帯や強酸性温泉という過酷な環境で生育し、pH1前後の強酸性と50℃近い高温に耐える驚異的な生命力を持つ。

藻類を活用したレアメタル回収スキーム

「この藻の最大の特徴は、金やプラチナ、パラジウムなどの貴金属イオンを細胞内に取り込み、高濃度で蓄積できること。従来の鉱石採掘や化学的リサイクルが高温・高圧・強酸を必要とするのに対し、ガルディエリア藻を使えば常温常圧の穏やかな条件で金属を回収できます」(同社・谷本肇CEO)

同社の開発した金属回収プロセスは、産業廃水や鉱山排水に藻体を投入、藻の細胞表面にある多糖・タンパク質がレアメタルを吸着、金属を抽出するというもの。

「基板などの溶液やめっき廃液の中に粉末のガルディエリア藻を投入し、金や銀、パラジウムといったレアメタルを吸着させます。その後、焼却処理をすればレアメタルのみの抽出が可能です」(谷本CEO)

昨今、レアメタルの有力な供給元として挙げられる都市鉱山。だが、再利用されているのはほんの一部であり、多くの有価金属がリサイクルされないまま廃棄されている。だが同社のソリューションは、これまで破棄されていた低濃度の溶液からも対象金属の回収可能。これまで捨てられていた廃液が利益を生み出す可能性も秘めている。

■途上国の課題解決にも貢献

同社技術は鉱山における金回収においても効果を発揮している。三井金属竹原製錬所との実証実験では、ボイラーの排ガスを直接利用してガルディエリア藻を培養する技術を開発。CO2の削減と貴金属回収効率向上を同時に実現した。

「小規模天然鉱山での水銀やシアン化合物に代わる環境に優しい金回収手法としても応用を進めており、有害な化学物質を使わない採鉱技術の確立により、発展途上国の環境問題解決にも貢献できると考えています」(谷本CEO)

今年2月には荒川化学工業、新日本電工と協業を開始。荒川化学工業とは貴金属のリサイクル技術に加え、食品や化粧品向けなどの開発も視野に入れる。新日本電工とは都市鉱山のサーキュラーエコノミー拡大に関連技術を応用し、新たな金属回収システムの構築を目指す。

これにともない、同社では静岡県内に藻の量産工場を立ち上げ、本年中にも稼働開始を予定している。これにより藻の生産能力を月4トンと従来の20倍に引き上げ、事業拡大を目指す。

谷本CEOは「地球と全生物に最適なエコシステムを確立する、というのが当社のミッション。ガルディエリア藻を活用した技術開発を通じて、環境的にも経済的にも持続可能な資源循環を実現していきます」と将来への決意を語ってくれた。

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(日本物流新聞2025年9月25日号掲載)