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モリテック、金型不要、ゴムを高精度に切削

投稿日時
2025/06/25 11:04
更新日時
2025/06/25 11:13

特製工具で0.1mm単位で追い込み
[ゴム素材の切削加工] 
大阪市港区

NHKの「超絶 凄ワザ!夢かなえますSP~世界を目指すフィン&究極のクルミ割り器~」(2017年5月19日放送)で、フィンスイミング日本代表選手が世界記録に挑んだ。この裏には大半が海外製のフィンを国産化するというもう1つの挑戦があった。専門家が考案した理想形状のフィンを削り出したのは、大阪市のモリテック(1961年創業、従業員280人)である。

モリテックが加工したサンプルワーク。微細な加工にも対応する

一般的にゴム部品は金型で成形されるが、同社はシートやブロック状のゴム素材から切削で複雑な三次元形状を高精度に削り出す。ゴムは加工熱で簡単に変形、そもそも油圧チャックで掴むだけで形が変わるためクランプもままならない。しかも同じ硬度でも厚みで変形のしやすさが大きく異なり、加工のアプローチも都度、変える必要がある。このお世辞にも切削性が良いとは言えない素材をどう相手取るのか。

「使うのはマシニングセンタや旋盤などの一般的な工作機械、あるいは『ロクロ』と呼ぶゴム加工向けに開発した小型旋盤など。ただ刃物はほぼ自社開発。こうした様々な機械や工具を素材の機械的物性や形状で使い分けて加工します。また人手で変形を抑えながら加工しなければ狙った寸法に追い込めないことが多く、手仕上げが必要。市販品に頼れず、独自の技術を継承して対応するしかない。難しいですよ」(森孝裕社長)

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切削で製作したゴム製兜

ロクロは段取り性を重視した卓上旋盤で、これで回転させたワークに人が特殊な刃物を手で当てて加工することも多いそうだ。変形量の大きいゴムの加工では重要な技能で、同社はこの職人技術に強みを持つ。ウレタンゴム向けの工具もわずかに市販されてはいるが、同社のオリジナル工具の方が加工性能が高かったという。

精度は「百分台は難しいものの、0.1ミリ単位で追い込める」ほど(素材や形状で変動)。一般的なゴム素材で100種類強、さらには特殊素材や幅広いレンジの厚みにも対応する総合力は類を見ず、東・名・阪に工場を構える業界最大手として日に4~5千点のゴム部品を出荷している。

■日本のお家芸?

金型を起こすほど数が出ない部品は特に産業機械に多く、自動車や半導体など幅広い業界の小ロット加工や試作を請け負う。型に縛られずモデルチェンジや特殊仕様へ柔軟に対応できる点も利点だ。だがそもそもゴムの切削加工という工法自体「まだまだ知名度不足」と森社長は見る。「金属や樹脂と比べどうしてもニッチ。ゴムが切削できると知らない人が多い」

知られていないからこそ海外市場に莫大な可能性があるかもしれない。実は森社長が知る限り、ゴムの三次元的な切削加工は日本特有の技術。海外ではゴムシートの切断や打ち抜き程度にとどまり類似の業態が存在しないという。

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5軸のウォータージェットなど様々な加工機を駆使

「ですから日本一なら実質世界一にもなる(笑)。まずは先進国に力を入れます。アメリカは約20年に進出し販売と簡易的な生産機能を持ちますが、かなり案件も増えてきている。次いで欧州も開拓したい。まずはゴムの切削加工という概念を広める必要があり、かなり手はかかりますが」

国内における課題は人手不足だ。ゴム加工は個人の技能による部分が大きく、基本技能をベースにスキルマップで技術を可視化してOJTで効率的に経験を積む方式を取るが、やはり一人前になるのに時間がかかる。森社長は「常に100年続く企業を目標にしている」とし、社員の待遇改善により注力する考えを語った。

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森孝裕社長

(日本物流新聞2025年6月25日号掲載)