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山善、廃棄衣類をボード材にアップサイクル

投稿日時
2025/06/09 16:18
更新日時
2025/06/09 16:21

不燃化技術開発で建材利用に活路

アパレル業界による地球環境への負荷は、温室効果ガス(GHG)排出量が約12億㌧のCO2に相当するなど、航空業界と海運業界よりも多いとされる。世界の工業用水汚染の約20%を繊維の染色・処理が占めるといった調査もあり、多大な影響を与えていることがわかる。一方で、新たに生産された衣類品の内、リサイクルされるのは全世界で1%未満。国内でも約3分の2が可燃ごみや不燃ごみとして焼却処理された後、埋め立て処分されており、使用済み衣類の活用は上手く進展していない現状がある。

防炎処理した「YAMAZEN再生衣料防炎床材」。耐摩耗性の高いポリウレア加工をすることで、床材としての耐久性も確保した

山善・家庭機器事業部は、こうした廃棄衣類をアップサイクルして活用するため「YAMAZEN再生衣料不燃内装建

材/防炎床材」をこのほど開発した。複合素材を含む廃棄予定の衣類を回収、ボタンやファスナーを取り除いた後に粉砕し、独自の再生ポリエステル樹脂とともに圧縮成形したリサイクルボードで、建築基準法で定められる不燃認定と消防法で定められる防炎認定にそれぞれ準拠した性能を有する。

「衣類のリサイクルは多様な素材が混ざってしまっていることが困難の要因。リサイクルボードへのアップサイクルは粉砕すればほとんどの素材に対応できるため、10年ほど前から進められてきた。しかし、ボードの活用先が家具や重機の敷板などに限られていた」

開発を担当した同事業部の宮崎徹二参事はそう語る。一方で今回開発した製品は、「それぞれの製品が不燃認定と防炎認定の基準を満たす性能を持っているため、従来から活用が期待されてきた内装建材や床材としても活用しやすくなる」とし、出口を大きく広げることができるようになると見る。

■木材の不燃化技術を応用

再生衣類のリサイクルボード化で先行してきた企業でも、防炎・不燃化の実現は難しいとされてきた。宮崎参事も「衣類の繊維をもとにした燃えやすい素材なのでそういうものだと考えていた」が、合板や木材の不燃化技術を持つ企業との出会いによって状況が変化する。

「建物の中に木材は各所で使用されている。なぜ使用できるかというと不燃化処理をしているから。この技術を使えば内装建材として使用できるようになるのではと思い、話を持ち掛けた」

第一回目の結果では、基準を満たさなかったものの防火性能の向上が確認されたことから、不燃化処理の方法を変えながらトライ。防炎性能は確保できるようになった。

「ある展示会でこの取り組みの内容を紹介したところ、内装建材として使うには不燃認定が欲しいという声をいただいたことからさらに取り組みを進めた」

最終的にモルタルやガラス繊維を表面に加工することで、不燃認定を得られるだけの性能を確保した。普及への課題や懸念はコストだと言うが、「建築業界はアパレル業界と同様にバージン材の使用比率が高く見直しが迫られている。先日の展示会でもコストが多少高くても取り組みたいと興味を示す方もいた」という。

宮崎参事はそうした企業に向けて、企業内で使用したユニフォームを回収して建材として活用することを提案する。「ユニフォームを回収して再利用に繋げるだけでなく、建材として自社の建物に使用いただくことで、社会貢献の取り組みを目に見える形で表現できる」。複合的なメリットを伝え、業界革新にアプローチしていきたい考えだ。

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山善・家庭機器事業部の宮崎徹二参事



(日本物流新聞2025年6月10日号掲載)