1. トップページ
  2. 連載
  3. ハタメタルワークス、短納期の小ロット銅加工で成長

連載

ハタメタルワークス、短納期の小ロット銅加工で成長

投稿日時
2025/05/26 13:21
更新日時
2025/05/26 13:25

売上が飛躍した受託加工企業の取り組みに迫る
[小ロット・短納期を中心とした銅部品の製造] 
大阪府東大阪市

3億円あった売上が1.5億円に半減した最も苦しい年(2005年)に、商社勤めだった畑敬三社長は畑鉄工(現ハタメタルワークス)の経営を継ぐことを決めた。売上の7割を占めていた電池大手の合併に伴う急転直下のピンチ。状況は分かっていたが「初めて決算書を見た時にちょっと後悔した」と畑社長は当時を振り返って笑う。だが同社の売上は1.5億円を底にV字で上向き、23年には10億円の大台を突破した。


機械加工に加え職人技術であるロウ付けにも注力。銅は熱に弱く溶接が難しいため様々な銅部品でこの技術が重宝される

入社直後に一社依存をやめようと、30社ほど新たな顧客を訪ね歩いたことで方向性が見えた。もともと銅加工が得意だったが、同業の多くは鉄やアルミが主力で銅は片手間、さらに小ロットで短納期という条件を加えるとほとんど受け手がおらず納期が延びる。これに多くの企業が困っていた。「案件ごとの金額は少ないものの、集めれば面白いという感覚があった」と、小ロットの銅加工に特化する判断を下した。このころから黎明期のHPに注力し、WEB経由の集客にも取り組み始めた。

これらの施策が噛み合ったことで同社は配電盤やキュービクルの部品、EV向けバスバーなどの試作で重宝される存在になっている。最短納期は1日。小ロット・単品加工をこなすため加工設備も量産より段取り性を重視する。「大ロットは断っています。量産を捨てるのは勇気が必要でしたがいま思えば小ロットでやっていくにはその決断が最重要でした」

■早帰りで生産性アップ 

1日で扱う図面が数百枚にも及ぶ同社。納期を早めるために仕事を効率よくこなすことが重要で、これに独自の「早上がり制度」が一役買っている。元はリーマンショックで仕事が減った際に、現場の職人がゆっくりと仕事をする姿に危機感を感じ、会社全体の仕事が早く終われば定時前でも帰れるようにしたのが始まりだった。

「やってみると皆めちゃくちゃ早く帰りたかったようで(笑)。思っていた以上にスピードが上がりました」。この文化は今も続いており、手が空けば他の工程の応援に行くなど自然と周りを見渡せる人材の育成にもつながっている。社員数は畑社長の入社当時からさほど増えていないだけに、生産性の飛躍ぶりが際立つ。

同社はコロナ禍の真っ只中に12億円を投じて新社屋を建て、社名も変更してさらなる発展に向けた大きなリスタートを切った。ただ闇雲に売上拡大を求める考えはなく、今まで通り生産性を突き詰めながら、利益率を重視した着実な成長を模索するつもりだ。

建屋の新設と同時に8台の生産設備を導入したが、EV試作向けの複雑形状のバスバーをウォータージェットより高効率に加工するためのファイバーレーザー加工機の導入も検討している。「数年前に導入した5軸が活かせる難しい加工にも挑みたい。小ロットなので難しいですが、素材の投入とワークの搬出を自動化するロボット導入も進めている」と挑戦は続く。

畑社長.jpg

畑敬三社長

        

(日本物流新聞2025525日号掲載)