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タカミヤ、駐車場・農地で発電する垂直ソーラー
- 投稿日時
- 2025/05/26 13:17
- 更新日時
- 2025/05/26 13:20
積雪地域でも太陽光発電
2025年脱炭素に向けたクリーン電源の「主役」と目される太陽光発電。16年には日本の導入量は世界全体の導入量の9.5%を占めたが、足元は鈍化傾向にあり、23年には同1.5%程度にとどまったとみられる(〈一社〉太陽光発電協会調べ)。
国土面積あたりの日本の太陽光導入容量は22年時点ですでに主要国で最大級に達しており、平地の少ない日本では設置場所の不足を解消しなければ現状を上回るペースでの設置は望めない。従来は発電に向かないとされていた場所にも目を向ける、新たなアプローチが求められている。

駐車場でのH-V System設置イメージ。独自の杭打機を開発しており静音かつスピーディに施工できる利点もあるという
仮設機材大手のタカミヤが、4月17日に垂直設置型の太陽光架台「H-V System」を発売した。フェンスのような形でパネルを「立てる」垂直式ソーラーはここ1、2年ほど国内でも注目が高まり、セブン-イレブンの店舗駐車場で実証運用が進むなど少しずつ導入例も見られだした。
「パネルの主流が片面受光から両面受光に切り替わり、太陽電池モジュールの価格が低下したことも大きい」と、タカミヤ・事業開発部PV事業課長 木下穣臣氏は背景を語る。「FITによる売電目的の発電所が増えたことで最適地がなくなっている。H-V Systemは発売間もないが、限られた用地で太陽光発電設備を設置したいお客様からすでに多くの問い合わせが寄せられている」
■積雪地域で発電
日本の日本海側には積雪地域が広がる。積雪地域では荷重に耐えうる設計や頻繁な除雪メンテナンスが求められるためコストが嵩み、これが太陽光発電所の分布に偏りをもたらしていた。北海道は平たん地が多く土地代も比較的に安いが、木下氏によればやはり「発電所の導入は雪の少ない太平洋側に偏っている」という。垂直に設置するH-V Systemは雪がパネル上に積もりにくく、パネル下端も高さ2㍍のため積雪地帯での発電に光明をもたらす可能性がある。
加えて通常の太陽光とは発電ピークをズラせるという利点も。一般的な南向き傾斜設置では太陽が南中するタイミングに発電ピークを迎えるが、東西に向くように設置した垂直ソーラーは午前と午後に発電ピークが分散。太陽光発電所の普及が進んだ今では「電力価格は、昼間は安く夜が高い」状況で、「電力単価の高い朝夕の発電量を増やせるという期待がある」という。
垂直式は従来の設置方法と比べ発電量こそ劣るものの、今まで設置が難しかった土地で発電できる点に期待が大きい。農作と発電を並行する営農型や休耕地、牧場などへの設置も考えられるが、中でも木下氏が有望視するのは企業の駐車場や工場の敷地内への設置だ。
「大規模なソーラーシステムは以前と比べ申請数が減っており、駐車場などで発電したいという要望は増えている。我々は21年からソーラーカーポートを展開しており、今後はH-V Systemと適する方を提案できる」
同社は現在、新たなソーラーカーポートも開発中だ。「多様な設置形態に応える製品の拡充が我々の使命だと思っている」と、木下氏は力を込める。日本の太陽光の今後が、狭い国土をどれだけ有効活用できるかにかかっている。
牧場への設置も視野に入る。なお一定の設置スパンを保てば日照も確保できるため農業と発電を並行する営農型も可能だ
(日本物流新聞2025年5月25日号掲載)