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大阪ラセン管工業、柔らかい金属チューブで高付加価値
- 投稿日時
- 2025/03/10 10:46
- 更新日時
- 2025/03/10 10:49
「超柔軟」「超極細径」「超高圧」の探求
[金属製フレキシブルチューブおよびベローズ式伸縮継手の設計・製造・販売]大阪市西淀川区
水道やガス配管のインフラから、半導体製造装置の真空配管、水素関連、医療機器、宇宙開発などあらゆる産業と生活に用いられるフレキシブルチューブ。大阪ラセン管工業(小泉星児社長)は1912年創業の日本最古の金属製フレキシブルチューブとベローズ式伸縮継手のメーカーで、80年代に主力製品の半導体製造装置向け製品を開発し国内で大きなシェアを持つ。

帯板をチューブに編み込む「平線ブレード」で加圧による伸びを防ぐ
独自技術を進化させ製品の「細さ」や「柔軟性」の強みを磨き、ここ十年で超高圧仕様や超柔軟、超極細径と限界に挑戦するフレキシブルチューブを生み出している。
最高使用圧力90.2MPaの超高圧仕様チューブは「研究施設や車載タンクなどの試験設備で使われている。2001年の愛知万博では燃料電池バスの充填ホースは当社の製品によるもの」(小泉社長)。
「世界最小径」という内径1.6㍉の超極細径に挑んだ「マイクロミニフレックス」は微細なガス検査機や光ファイバーの保護管として用いられ、カテーテルなど医療機器への展開も有望だという。今よりさらに半分の内径にも挑戦しており「開発のめどは立っており、継手の最小規格にチューブが追い付ける」と自信を見せる。
高い柔軟性が特長の「ワームフリーフレックス」は肉厚が0.15㍉ほどでゴムホースのようなしなやかさと耐圧性、耐久性を両立。「何度も繰り返し曲げると疲労で割れてしまうが、極限まで寿命を延ばした」点が評価されISS(国際宇宙ステーション)の「きぼう」日本実験棟でも採用された大きな実績を持つ。
これら3つの柱となる製品は「もっと柔軟性を、もっと細い径を、と言われたから作ったわけではない。どこまでできるかな、と追求しているだけ」とからりと話す。そう言えるのは半導体製造装置向け製品が基盤となるシェアと売上があるからだが、挑戦そのものに果敢な姿勢が同社の強み。「もちろん売れたら嬉しい。作ったものを持っていくとお客さまが『じゃあこれはできる?』と可能性を拡げてくれます」と喜々と語る。
■ハイテク産業支える高付加価値チューブを
「お客さまが求める流量により径や長さが代わるため、幅広く対応できるようにしています。半導体産業以外の製品は、ほぼ受注生産」(小泉社長)として、随所で機械化を進めるが人の手による作業も欠かせない。
レキシブルチューブは加圧による伸び防止や保護のため、外周にブレードと呼ばれるステンレスの線材や帯板を編み込む。量産ラインではブレードマシンを使うが、職人が編みかけることも多い。「人の手による角度調整が必要な作業。チューブとブレードが浮かないようできるだけピタっと編むことで、伸びを拘束し柔軟性を維持できる」と言う。
また、ブレード内のチューブとリングを付ける継手部分のなめ付け溶接も「径、長さ、継手がまちまちで自動化できない部分」。このほか銅パイプとの異種材や高圧仕様のチューブでは、強度の高い銀ろう溶接で接合する。完全な気密性が求められるフレキシブルチューブの高い品質に繋がる部分でもある。
これまでスーパーコンピューター「富岳」の冷却配管やH3ロケットの1段目エンジン搭載の配管部品に採用されるなど、先端産業を支えてきた。「航空宇宙・防衛産業に関わるJISQ 9100(品質マネジメントの国際規格)を取得したので航空宇宙をさらに伸ばしたい。医療機器も大きな期待が持てます。フリーズドライなどの食品や、自動化が進むだろう農業畜産も可能性を感じます」と未来を語る。