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寺岡精工「必要な分だけ」量り売りと最新技術の融合
- 投稿日時
- 2024/12/25 09:55
- 更新日時
- 2024/12/25 10:00
ゴミ削減しつつ買い物時間をスムーズに
来店者が持参した容器に、必要な分だけを購入できる量り売りシステム。包装を省きムダなゴミが出ない販売方式で、プラスチック削減やフードロス削減を実現できると注目されている。
寺岡精工は4年前から、買い物客が自分で量って購入できるセルフ量り売りソリューションを提供、環境意識の高い欧州を中心に普及が進んでいる。スケール・メディアソリューション事業部 渡邉直浩事業部長は「日本での量り売り販売の展開はこれから本格化する」とするが、全国で100店舗以上に導入されている。「量り売り専門店のほか、大手スーパーやコンビニの環境意識の高い企業が実験的に数店舗やっている。今後は大手チェーンスーパーが本格展開するためのPoCテスト導入が盛んになる段階」と話す。
500円硬貨サイズのモーションセンサー「e.Sense」は什器のレバーの動きを検知し、購入商品のデータを近くの機器に無線で送信、自動で商品が表示される。「All-in-One Bulk(オールインワンバルク)」ははかりと什器を一体化。什器と商品の総量から取り出された重さを計算する世界初の減算式はかりで、商品量を都度計量し値段を表示する。ナッツやコーヒー豆、乾物などと、醤油やオリーブオイル、洗剤といった液体商品を一度に陳列できるのも特長だ。減算式はかりにNFC技術を搭載した「GramX」は好みの量を取ったら専用カードをかざし、その操作を他の商品でも繰り返し、すべて取り終えたら精算用ラベルが発行される。「SM―6000AI」は内蔵するカメラがフルーツなど青果物を迅速に自動認識、画面上に選択した商品を表示する。商品選択ミスや選択時間を削減する。「大手スーパーで12月から稼働されている」と、最新テクノロジーを注いで買い物時間の効率化を実現する。
「従来の量り売りは売り場ごとに人がいなければならなかったが、デジタルの力でセルフ方式に。購入品を自動表示することで買い物客が迷わず選べ、ミスを防止できる」
世界初の減算式はかりのリキッドスケール
ゴミを出さない「ゼロ・ウェイスト・スーパー」を掲げる斗々屋は、同社をテクノロジーパートナーとして日本での量り売り文化の浸透を目指している。800もの商品を陳列する店内で、スピーディーな処理ができる量り売りシステムを活用し、少人数のスタッフでもスムーズな買い物時間を提供している。渡邉事業部長は「初めてのお客様も一度で操作を覚えられる。ガイド無しでも感覚的に操作してラベル貼りまで終える方も多く見ました」とし「わくわくする、という声も聞きますよ。昔ながらの量り売りと最新技術の融合ですからね」と声を弾ませる。
■業界一体で量り売り国内普及を
JETROによると2030年以降、仏では400平方㍍以上のスーパーマーケットは量り売り販売の面積を全体の20%とする環境法を策定、施行しているという。量り売りが今後のスタンダードとなる可能性は大いにある。買い物時間の効率化を実現した次の課題として、店側の負担になる什器の洗浄や、異物の混入や湿気防止など商品の品質管理に取り組んでいる。
同社は現在、商品を袋に入ったままセットできるディスペンサーを開発中。来春には展示会で発表を予定している。袋ごとセットできるため密封性が上がり、移し替え作業も不要となる。
「これまでは商品の袋を破いて補充していましたが、ひとつの大きな袋にすることで作業の手間だけでなく包装を省けます。プラスチック削減により近づくわけです」買い物客にも経営者にとっても持続可能な買い物となる。
「ただ、そういった包装は食品メーカーと一緒に進める必要があります。作るところから売るところまで一貫で協力し、買い物客が買いやすい、お店からすれば売りやすいシステムを提供できれば日本でも量り売りは増えていきます」と普及に向けてより大きな動きを呼び掛ける。
スケール・メディアソリューション事業部 事業部長 渡邉 直浩 執行役員
(日本物流新聞2024年12月25日号掲載)