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Odd Welding、多品種少量も自動化する溶接ロボット巧者

投稿日時
2024/05/02 10:35
更新日時
2024/05/02 10:41

溶接×治具×管理でロボを使いこなす 

Odd Weldingの松村清久社長は高校卒業後に大手重工メーカーへ就職。研修中に技能五輪の出場者に選ばれ、溶接技術者の道を歩み始めた。「同僚にも技を見せない」ほど職人気質な溶接業界で、間近に迫る五輪のため短期で腕を上げるには技術を理屈で身につける必要がある。「各動作を撮影し、分析・改善で理論的に技術を高めました」。うさぎ跳びのような反復練習で技を磨く世界では異色だが、これが結果的に後の起業を助けた。

松村清久社長。就職後まもなく出場した2008年の技能五輪では溶接部門のメダルを獲得した実力者だ。後ろはダイヘンの溶接ロボット

[溶接、各種治具の設計製作、溶接・ロボット指導] 
大阪府東大阪市

溶接や加工・溶接・検査治具の設計製作を手がける同社は、溶接ロボットの扱いで頭抜けた存在だ。溶接職人は「手の方が早い」「手でないとできない」とロボットを侮りがちだが、難しい案件こそロボットで品質を保つべきと松村社長は言う。「キーワードは『誰でも』。きょうびロボット動作は誰でも組めます。実際に私はパートの方に動作作成をお願いし、ロボットが不向きとされる多品種少量の溶接をロボット化しています」

少量生産をロボット化できる理由は作業の徹底した細分化だ。「難しい仕事も分解しつくせば最終的に単純作業」と松村社長はさらりと話す。細分化には技能五輪のため溶接動作を分解した経験が生きる。ロボットは切り出した一部の作業を担い、分解が難しい案件は治具を作り平易な作業に変える。工程を分けると管理が難しいが、エクセルで独自システムを組み工程や作業者ごとの所要時間やコストも可視化。こうすれば単価の厳しい仕事もロボット化し利益が出るようになる。「頭から尻尾まで自動化=ロボット化じゃない。他社とはロボットとの付き合い方が違うと思います」

写真2.jpg

製作した治具の一例。フライス盤を所持しており、設計だけでなく製作もできる。設計はすべて3Dで動きの複雑な治具も得意だ 

溶接技術は未解明の部分も多く、単純な計算式では歪みも予測できない。業界ごとに求める要素も違う。「住宅業界は多少歪んでも溶け込み最優先。装飾金物は強度より溶接痕を残さないのが重要で、熱処理関連では過剰なまでの溶接が逆に良しとされる」という具合だ。同社はこの知見をデータベース化。だから未経験者もロボット動作を組める。動作は松村社長が確認、検査で品質も担保している。

■未経験者も戦力へ 

現在の売上は溶接と治具の設計製作が半々。溶接は装置部品や公共工事関連が多いが、小物溶接なら幅広く請けている。コロナ禍に多くの企業が溶接の量産を内製化したが、各種治具の設計製作がその穴を埋めた。治具の技術は重工メーカー退職後に勤めた板金メーカーや、その後に参画した部品加工会社で独学で習得。3D設計やロボットの扱い、エクセルでの管理システム作成も同じく自主的に習得した技術だ。磨いた技の集大成が、まさにOdd Weldingの事業と言える。

同社は溶接ロボットの扱いなど要望に応じ知見を外部提供する。溶接技術の指導も得意で、自社の溶接技術者はみな未経験スタート。発信する初心者向けの教育動画もYouTubeの人気コンテンツだ。

「溶接は習字に似ている」と松村社長が例えた。「習字は誰でもできますが上を目指すには経験が必要で、一目で巧拙もわかる。溶接も同じ。だからこそ職人気質なわけですが、必ずしも職人が行う必要のない案件も多い。私は1日で特定場面の溶接ができるよう理屈で教えます。治具で溶接距離を矯正し作業を単純化することもあります」。かくして未経験者も溶接業界で活躍できる。人材難に悩む現場の1つの解決策を見た気がした。

(2024年4月25日号掲載)