1. トップページ
  2. 連載 Rの時代~再生「Re」活用の時代へ
  3. 3Dプリンター製パーツフィーダーが市場デビュー

連載 Rの時代~再生「Re」活用の時代へ

3Dプリンター製パーツフィーダーが市場デビュー

投稿日時
2025/12/24 15:34
更新日時
2025/12/24 15:36

静音・軽量・高能力、業界に新風

パーツフィーダーを積層造形するという異例の取り組みによって、装置の大半が樹脂製のフィーダー「Sii-Karu」が誕生した。特殊鋼卸の山一ハガネ(名古屋市)が、独自開発の素材を自社製3Dプリンター「スリーイクシット」で3D造形したものだ。軽く、静かで、供給能力が高く、製作も熟練技術によらないなどメリットは大きい。開発に協力したパーツフィーダーメーカーでSii-Karu販売代理店の前畑精機(名古屋市)は、「フィーダー業界が抱える課題を一気に解決できる可能性がある」と期待を寄せる。

「Sii-Karu」は3Dプリンター製パーツフィーダー。写真はボルトやねじに特化した「Bシリーズ(ボルフィー)」にボルトを流し込む様子。他に径が800mmの大型仕様もあり、理論上はM20までのボルトに対応できる

パーツフィーダーは回転や振動を利用し、ボルトなどのワークを揃えて供給する装置だ。形も重心も様々なワークの微妙な挙動を見極める必要があるため、製作には知見が要求される。しかも業界では図面を描かず、頭の中で完成形を思い描いて部品を切り出し、手作業で板を曲げたり溶接しながら製作するのが一般的。わずかな油や静電気の影響で机上の計算通りに動かないことも多く、人手不足が深刻化するなか技能伝承が業界の構造的な課題だった。

Sii-Karuは大半の部品を3D造形することでこの課題に挑んだ。まず出来栄えが職人の腕によらないため再現性が高い。カスタム可能な「Pシリーズ」、ボルトやねじに特化した「Bシリーズ(ボルフィー)」、ドラム型の「Dシリーズ」を展開し、中でもボルフィーはM8×35㍉のボルトの場合、供給能力が毎分350本前後と従来品(同100~150本程度)と比べ極めて高い。従来の回転式フィーダーでは難しかった、ワークの姿勢を揃えることもできる。

パーツフィーダーは騒音も長年の課題だった。大型の振動式フィーダーでワークが金属だと、稼働時の騒音は120dB(飛行機のエンジン音級)に達することもあるという。樹脂製のボルフィーは騒音値を数十dB下げられる可能性がある(仕様やワークで変動)。

さらにパーツフィーダーは一品一様の設計が基本だが、径500㍉のボルフィーはM4~M8のボルトに1台で対応可能だ。ワークの切り替えは上部の2㌔ほどの部品を交換するだけでよい。ボルトのほかリベットなど似た形状に対応できる可能性もある(要テスト)。重量も従来のフィーダーは100㌔以上だがボルフィーは約30㌔と手軽に移動可能だ。パーツフィーダーの様々な課題を解決に導けるかもしれない。

■電話一本で修理も

前畑精機によれば3D造形で大きなメリットが見込めるのはメンテナンスだ。パーツフィーダーは使ううちにワークに触れる部品が摩耗し、連休を見計らって引き取り修理が必要だった。導入企業も休日出勤で立ち会うことに。当然、工数に応じた修理費も発生する。

Sii-Karuは摩耗した部品をすぐ出力可能だ。ユーザーが簡単に交換できるうえ部品も軽く、極端な話「宅急便で送るので交換しておいてください」と、電話一本で交換修理が済むかもしれない。組立などの工程では供給能力が過剰になり、従来のパーツフィーダーとは適切に使い分ける必要があるが、前畑精機は「検査やプレス加工など供給能力が必要な現場で役立つのでは」と想定する。

Sii-Karu2025年の夏に販売を開始。前畑精機も「反響は大きい。ねじメーカーなどから具体的な引き合いがある」と手ごたえを感じている。「今後はより多くの業種業態に販売を進めたい」と意気込んだ。

Rの時代01.jpg

左がSii-Karuで右が従来のパーツフィーダー。従来はベースが鋳物のため重いが、Sii-Karuは樹脂製のため軽い

(日本物流新聞20251225日号掲載)