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扉の先96/大型案件もこなす北九州のロボットSIer

投稿日時
2025/06/25 10:00
更新日時
2025/06/25 10:04

「言われたとおりにはつくらない」

鉄鋼業を中心に発展し四大工業地帯の一つとして知られる福岡県北部。そこには地元振興を目指す北九州市の呼びかけで2018年度にできた「北九州システムインテグレータネットワーク」がある。9社で立ち上がり、会員は現在19社に拡大した。その副会長(小野裕和社長)を務めるドーワテクノスを訪ねた。

奥行き50mのTSUNAGU FACTORYでは納入前の自動装置のテストが行われていた。

同社のロボットSIer事業を担うのはFAシステム部の20人。手がける石炭やコークスのサンプリング装置(原料を抜き取って粉砕・縮分を繰り返し偏りのないサンプルを作る)や高速道路の床板製造装置(鉄筋とコンクリートを組み合わせて道路の基本構造材を造る)などは納期数年、価格は億単位という超大物。かと思えば、食品の製造ラインや加工機横に付ける単体のロボットも。

「得意分野をつくるといいのかもしれないが、お客様が多種多様で、我々はずっと広い間口で仕事をしてきた」

FAシステム部の田中弘行ゼネラルマネージャーはそう話す。ロボットSIer事業の特長を問うと「言われたとおりにつくらないことかな(笑)」と返ってきた。

「お客様の意図を理解したうえで、そのままでなく何らかのプラスαの提案をする。お客様は理想をもつが、できることとそうでないことがある。納得できる代替案を提示することも必要」

たとえば高速道路の床板製造装置なら上下に2台ずつ計4台の多関節ロボットを配置する一方、真っすぐでない鉄筋を結束するのに3次元カメラを用いて位置補正し、6人を要した手作業を2人に省人化した。溶接工程の自動化では既存の加工機はそのまま生かし、加工機の間にロボットを配置して自動製造ラインをつくった。

■大学、新興企業と連携

ドーワテクノスは2023年10月、本社の向かいに新工場「TSUNAGU FACTORY」(2階建て、延床1484平方m)を竣工した。これを機にSIer事業の設計・製作・施工・試運転・保守の一連の流れのうち、外注に頼っていた製作を内製しワンストップで受注できるようにした。

「自社でいろんなテストができるようになった。SIerは職人なので、若手社員の教育には目の前でやって見せることが大切」

この工場は産官学の協業に役立てる狙いもあり、すでにスタートアップ企業に無償で貸してもいる。また北九州市立大学との連携を検討中で、同大が27年4月に新設する「情報イノベーション学部」にも講師派遣などで関わる予定で調整している。

近年ドーワテクノスには、ユーザー企業から検査工程などにAIを活用したいという要望が増えている。大学との連携はAIを強化する目的もある。

1面【扉の先】ロボットSIer・ドーワテクノスP1.jpg

シーリング材を貼り付けるエプトシールシステムを紹介する田中弘行ゼネラルマネージャー

(日本物流新聞2025年6月25日号掲載)