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扉の先94/ティ・アイ・エス、食品に強いロボットSIer

投稿日時
2025/05/26 13:10
更新日時
2025/05/26 13:15

饅頭をロボットでピッキング

ティ・アイ・エスは食品業界に強いロボットSIerだ。専用機やロボットを用いた生産ラインを主に手がけるFA事業部は、納入先の約7割を食品関連が占める。3割は医薬品などで、FA市場の大票田である工業系はほぼ手がけていない。

ふりかけを化粧箱に詰める工程を自動化

食品業界を主戦場とするSIerは少ない。その理由をFA事業部営業部FA営業課リーダーの與座章人氏は「同じじゃないから」と推測する。「生ものは同じ見た目でも、気温や湿度など様々な要因でひとつずつ出来が違う。それを画一的に扱う必要があるから自動化が難しい。同じものを量産する工業製品とはそこが違う」

例えば饅頭は天候で原料や水の比率を変えるため、蒸し器から出てくる完成品は毎日微妙に性質が違う。粘着性が強いこともあれば崩れやすい日も。同社はその蒸したての饅頭を生のまま冷ましながら搬送し、ロボットでピッキングしトレーへ載せるラインで実績がある。ただロボットでピッキングする工程が鬼門だったと與座氏は振り返る。

「社内テストは冷凍した饅頭を解凍して蒸したものを使い、市販のハンドで吸着できた。そうして完成した設備を現場に移して生の饅頭を相手にしたが、あまりに性質が異なり話にならなかった。冷凍と状態がまったく違っていたので」

生の饅頭を通常の吸着ハンドでピッキングすると中の餡子まで吸い出してしまう。そこで非接触の吸着ハンドを自社設計した(詳細は社外秘)。滑りやすく不定形で重い10キロの冷凍肉の箱詰め工程を担ったこともある。こうした厄介なワークにも「何かは提案する」のが同社の基本姿勢。7年前ごろに参入した食品業界ではこれが有効に働き、深く食い込んだ。

■汎用化が課題

ロボットからは離れるが、漢方薬などを煎じて分包する機械も開発した。自動煎じ機は大半が中国や韓国製で国産は「知る限りなかった」と與座氏は言う。海外製だとメンテナンスが難しい。そこで開発した国産自動煎じ機が、漢方薬局のバックヤードなどに累計で百数十台も導入されるヒット商品になった。

製作した他の自動化設備を、こうしたパッケージの汎用品に落とし込むのが今後の目標だ。特に実績が多い食品を化粧箱に詰める工程や、化粧箱を段ボールに詰めるケーシング工程で汎用品の開発を模索する。中身の姿勢や状態次第では化粧箱が膨らんでしまうため一筋縄ではいかないが、「冷凍食品は形状と動きが似通うため、より実績を増やし、ケーサーを主力製品としていく」という狙いだ。

そのためにも食品業界をより深耕するつもりだ。「食品業界は34年前までユーザーの予算感と自動化システムの価格の乖離に悩まされたが、今は設計費への理解も進み感覚の違いが減ってきた。人手不足で自動化に向けた機運も高まっている」。九州や中国地方が主だった活動範囲も、大阪に拠点を作ったことで西日本全域が視野に入った。

足元では難産だった饅頭のピック&プレースシステムに続き、焼き菓子を扱う自動化ラインの引き合いも寄せられているという。こちらも難度は高そうだが、與座氏は「前向きに対応したい」と笑った。

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自動煎じ機を開発。国産ではかなり珍しいという

(日本物流新聞2025525日号掲載)