連載
扉の先91/SUS、双腕ロボットなどで全自動化
- 投稿日時
- 2025/02/21 15:07
- 更新日時
- 2025/02/21 15:11
組立〜パレタイズの25人を0.5人に
生産ラインの無人化は多くの企業が目指すところだが、それを本当にやってしまったのは静岡県南西部の菊川市に工場をもつSUS(社員1050人、1992年設立)。5台の双腕ロボットが昼夜問わず部品を組み立て続ける様子は圧巻だ。これに段ボール箱詰め、パレタイジングのロボット化を組み合わせて全自動化。25人を要した一連の作業を0.5人に省人化した。

ABBの双腕ロボット「YuMi」が5台並ぶコネクター組立ライン
SUSの主事業はFA向けのアルミ構造材や機械装置の販売。からくり機構を用いた省力化装置も手がけてきた。からくり装置は自重を利用するなどして動力なしでワークを搬送する。自社工場内の機械設備の上方にある空中搬送システムは、14㍍の距離を2.8%の勾配で結ぶ。このような無動力搬送を社内外に提供し続けているが、調整は難しくチョコ停もゼロではない。そこで装置内の一部にアクチュエーターやコントローラーを組み込んで少しの電気を使うものも増えた。その後ロボットを採り入れたり、協働ロボットと台車を組み合わせた標準架台のラインナップを拡充したりするようになり、SIerへと発展した。
SIer事業を担うのはECS(エンジニアリング・CAD・サービス)チームの25人。得意分野はABBのパラレルリンクロボットを使った食品分野の梱包作業の自動化。電動からくりは年に約120件、ロボット装置は5、6件(うち半分は社内設備向け)を納入する。
■課題は検査自動化
冒頭の5台の双腕ロボットを導入したのは2023年。組み立てるのは、月産100万個という同社主力のアルミパイプ構造材GFのコネクター。形の異なる2種のコネクターはホッパから投入され、左右のロボットハンドで対になる2つを掴んで差し込み、電動ドライバーでボルト締めし小分けする。外観検査を含め1個つくるのに要する時間は4秒強。人では熟練度に応じて5~10秒と大きな差はないが、ロボットは夜間もずっと働き続けられるのが大きな利点だ。
組み立てたコネクターはパラレルリンクロボット(19年導入)で10個ずつ持ち上げて梱包し、多関節ロボット(24年導入)でその段ボール箱をパレットに積み上げる。これらの作業は人件費の安かったタイで人手で行っていたが、アルミダイカストを含めて15年から日本に生産を移した。
同社のSIer事業は社内設備の自動化で実績を積み重ね、それを外販するスタイルなので説得力があり、間違いがない。また工場はそのままショールームとなる。顧客の要求に変化はあるのだろうか。
「従来は組立の自動化仕事が多かったが、この2、3年は検査・梱包のニーズが増えている。とりわけ検査には多くの人手を要し、作業者が疲れると品質に影響が出る」
設計・開発担当の長田展幸取締役はそう話す。実は同社でも検査の自動化が課題になっている。誤認識は0.5%ほどとわずかに思えるが、月に100万個つくるとミスは5千個に及ぶ。なぜ検査の自動化は難しいのか。
「部品表面にはダイカスト品特有のカケ・キズ・シミが生じる。そのOK・NGの判断をカメラで捉えて数値で判断するのは難しい。完全なNG品は取り除けるが、OK品まで弾いてしまう。その最終チェックを人に頼っているのが現状」
流行りのAIを使う手もあるが、AIに任せると余計に厳しく判断されるという。カメラメーカーの協力を仰いで、検査自動化の精度アップに取り組む。
ECSチームで双腕ロボット設備設計担当の河住雅広氏(左)とパレタイズロボット設備設計担当の葭原徳子氏。左は段ボールをパレットに積むパレタイズロボット
(日本物流新聞2025年2月25日号掲載)