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ファザーマシン2/Chapter58

投稿日時
2025/10/24 16:22
更新日時
2025/10/24 16:28

3Dプリンターでのモノづくり

みなさん、こんにちは。工業系YouTubeチャンネル、なんとか重工のとんこつです。

今回は、「3Dプリンター編」をお送りします!

我が家の3Dプリンターです

もともと工場で機械加工をしていた私にとって、「ものづくり=削るもの」でした。鉄やアルミをフライスで削ったり、旋盤で削ったり。それが当たり前で、むしろ『積み上げて作る』という発想すらありませんでした。

FFF(熱溶解積層)方式は、素材となるフィラメントを熱で溶かし、細く絞り出しながら一層一層積み上げていく。その姿は、見ているだけで面白いです。削るでもなく、切るでもなく、ただ積んでいくだけなのに、最終的には立派な立体物が完成する。不思議で、そしてなにより新鮮でした。

積層造形をモノづくりに取り入れ始めた当時はまだ情報も少なく、YouTube上にも今ほど分かりやすい解説動画はなかったので、設定や使い方も手探り。簡単そうに見えて、実は考えることがけっこう多く失敗することもあります。

3Dプリンター本体の選び方はもちろん、使うフィラメントの種類、スライサーソフト、そして3Dモデリングも自分でやる必要があります。

スライサーソフトというのは、ざっくり言えば『プリンターにどう動けばいいかを教えるソフト』で、温度やスピード、積層ピッチ、射出幅、充填率など、細かく調整が必要になります。機械加工で言えばCAMに近いですね。

そして当然、出力するには3Dモデルが必要になるので、モデリングソフトで形を作る。これも最初はとにかく「機能すればいい」というレベルで、正直なところ、見た目は気にしてませんでした(笑)。

しかし、回数を重ねていくうちに、「どうせ作るならカッコよく作りたい」と思うようになり、最近ではデザインまで意識して設計するようになりました。

■家庭内でも出番が

こうした設計の繰り返しが、結果的に自分のスキルアップにつながっているのは間違いありません。何かを作るたびに、「こうすれば強度が出るかな」とか、「見た目も使い勝手も良くするには?」と自然と考えるようになります。

活用の幅も広くて、私の場合は試作や治具の製作はもちろん、家庭内でも出番が多いです。

妻から「ここにちょうどいいフックが欲しい」と頼まれることもしばしば…。百均にもフックは売ってますけど、「この場所に、この形で」となると専用品を作るしかない。それを自分で設計してサクッと作れるのは、やはり大きな魅力ですね。

昔だったら、代用品を無理やり削って使ったり、そもそも諦めてたことも、今では設計してプリントすればOK!

今でこそ3Dプリンターは一般家庭にも徐々に普及し、教育現場や個人の趣味レベルでも当たり前に使われるようになってきました。

しかし、この自由を手に入れられるようになったのは、2009年にストラタシス社の主要特許が失効したことがきっかけです。

それまで3Dプリンターは企業や研究機関専用の高級機器で、一般人が手にするなんて考えられなかった時代。特許が切れたことで、世界中のメーカーや個人が自由に開発・製造できるようになり、そこから一気に世界中に広がりました。

このとき始まったのが『RepRapプロジェクト』。自分で自分を複製できる3Dプリンターを目指す、まさにロマンあふれる取り組みでした。設計はオープンソースで公開され、世界中の技術者やDIY好きがガレージでプリンターを作り、改良し、また発信していく。

今ではおなじみのPrusaやCreality、Anycubic、Bambu Labといったメーカーも生まれ、機能はどんどん進化し、価格もどんどん下がり、今では家庭でも手軽に導入できる時代になっています。

そんな時代に、こうして3Dプリンターと出会えたこと。YouTubeで情報発信しながら、リアルタイムで技術を体験できていること。どちらも本当にありがたいなと感じています。

次回もお楽しみに!



(日本物流新聞2025年10月25日号掲載)

工業系YouTuber【なんとか重工】とんこつ

工業系YouTubeチャンネル【なんとか重工】を、相方のケロと2人で運営。旋盤やフライス、マシニングに溶接機、3Dプリンターなどを活用して自分たちが作りたいモノを作るチャンネル。登録者数は13.5万人(2025年10月24日現在)