ユーチューバーの収入源は、広告収入だけでなく企業案件というものがあります。これは企業から依頼を受けてPRを行う仕事で、報酬もさまざま。Amazonギフトカードや商品そのもの、もちろん現金での支払いもあります。

登録者1万人程度でも、そういった依頼はちょこちょこ来るものの、チャンネルの色に沿わない案件も多く、お断りすることも少なくありません。

そんな中、2019年6月――YouTube NEXTUPに選出される少し前に、とある工具メーカーから案件が舞い込みました。

内容は「自社の切削工具をPRしてほしい」というもの。正直、めちゃくちゃ嬉しかったです。製造業界を盛り上げたい!応援したい!何か貢献したい!と活動してきたからこそ、ついにそういう話が来たかとテンションが上がりました。

なんとか重工は、ものづくりの中でも特に機械加工に重きを置いて活動してきました。しかし、当時はまだ機械加工の業界がユーチューバーを使うなんて考えられない時代。そんな中、無名のなんとか重工に初めて業界の依頼をくれたメーカーはオーエスジーさん。そう、日本が誇る総合切削工具メーカーです!

どうやら、たまたまYouTubeで私たちの動画を見つけてくれたらしく、興味を持って連絡をくださったとのこと。ただ、機械加工ができるユーチューバー自体が珍しいので、オーエスジーさんにとっても初めての試みだったそうです。当然、担当の方も「進めたい!」と思っても、なかなか企画が通せなかったと思います。

そして、ようやく承認された後も気は抜けません。「絶対に失敗できない」というプレッシャーがすごかったです。オーエスジーさんにとっても、なんとか重工にとっても価値のある動画にする必要がある。

でも、堅くなりすぎるとYouTubeのエンタメ性がなくなってしまう。企業案件だからといって、ただ商品紹介をするだけではダメなんです。

■オフ車のスプロケを再利用

そこで考えた企画が――

「削り出し最強のピザカッターの作り方」。

カッター部には、エンジンが焼き付いてしまった私のKTM125EXCのリアスプロケットを使用。そして、その他のフレームやハブは64チタンとアルミの削り出しで製作。実はこの企画、最初はスプロケットの再利用方法をXでフォロワーに聞いたのがきっかけでした。

すると、あるフォロワーが「ピザカッターにしたら?」とコメント。このアイデアをもとに、本気で作ることにしました。

一見、バカげた企画ですが、製作にはこれまで培った機械加工のノウハウが詰まっています。さらに、工具の性能を伝えるための見せ方も工夫しました。

この動画はオーエスジーさんにとっても、私たちにとっても新しい挑戦で、結果的に大成功!　視聴者からの反応も良く、称賛のコメントが多く寄せられました。

今でこそ、多くの企業様から依頼をいただいていますが、この最初の一歩を踏み出してくれたのがオーエスジーさんだったことは、一生忘れません。ちなみにこのピザカッターはオーエスジーさんのオフィスに展示されています。次回もお楽しみに!

（日本物流新聞2025年2月10日号掲載）