もろもろ終わった後、皆さんに自己紹介をしました。何を言ったか覚えていませんが、大したことは言ってないはずです（笑）。

挨拶を終え、私の担当する普通旋盤のところへ案内されました。案内して下さったのは同じ旋盤部隊で2歳年上のKさん。旋盤部隊は他に少し強面で40代くらいのベテランNさん、60代くらいで大ベテランYさんです。その中でもNさんとYさんは大型の旋盤を扱っていました。（軸方向ではなく、径方向に大型）

生産管理? の方から図面を渡され、「とりあえずこれ作ってみてくれる?」と言われました。形状は特に難しくなかったですが、幾何公差が入っていたのと、初めて触る旋盤なので、いつもよりも慎重に加工した記憶があります。

使用できる工具は、旋盤の横にある腰くらいの高さの棚の中にありました。基本的に工具が少なく、手研ぎバイトが欠けていたり、スローアウェイ工具のチップの下に入れるシートが割れており、少し嫌な予感が…。

もう1つ気になったことは、2歳年上のKさんが作業中やたらと覗いてきたり、頻繁に姿を消すこと。Kさんは、私の向かいで旋盤作業をしているのですが、どうも様子がおかしい。

1つ目の加工を終えた私は、報告に行くついでにKさんの作業を覗いてみることにしました。Kさんの旋盤からは、なぜか切粉が出た気配がありません。どうやら芯出しが上手く行かず、苦戦している様子でした。詳しく話を聞いてみると、まだ入社して半年で、旋盤に触るのはこの会社で初めてとのこと。この時点で「あ、受かりそう!」と、思ったのは内緒です。

■約束の試用期間を過ぎて……

そんなこんなで旋盤歴は私の方が長いので、忙しいNさんの代わりに旋盤を教えることになりました。姿を消していたのはベテランNさんにやり方を聞きに行っていただけで、Kさんはいわゆる『センスのない人』というわけではなく、単純に経験が少ないという印象で、その後はテキパキと作業を進めていました。

お昼休みは会社のお弁当を食べ、自動販売機で紅茶を買い、その後はKさんといろいろ話しました。私の地元の同級生を知っていたようで、その日の内に打ち解けることができました。よく一緒にパズドラだったか、モンストだったかをしていた記憶があります。

そして特に変わったこともなく、約束の1週間が過ぎ、専務に報告に行きました。

とんこつ「あのー、1週間経ちましたけど…」

専務「あ、そやったか。まだ社長と話してないわ」

結局、使用期間は3日ほど延びましたが、直接社長室へ呼び出され、「製造業も厳しいけどやる気ありそうやから」というわけで無事採用されました。

この業界は経験が全てだと思います。どれだけ壁にブチ当たって乗り越えられたか。苦労してでも乗り越えられた壁は、次また同じ壁が立ちはだかっても楽に越えられるはずです(壁の登り方を覚えていれば…)。

転職編はここまで、次回、とんこつやらかします!　　自身満々な旋盤小僧の心が折れる?　お楽しみに～。

（2023年11月10日号掲載）