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ホリゾン、24時間稼働のスマートファクトリー

投稿日時
2025/06/09 16:22
更新日時
2025/06/09 16:25

年間700種・1万5千台の製本関連製品を製造

琵琶湖の北西部に位置する滋賀県高島市。湖と比良山系に囲まれた自然豊かなこの土地に、製本関連製品の製造・販売で世界トップクラスのシェアをもつホリゾン(社員はグループ国内で666人、グループ全体で751人)の本社びわこ工場・ショールームがある。敷地は14万平方㍍と東京ドーム3個分の広さだ。

琵琶湖のほとりにある本社びわこ工場・ショールーム(敷地面積14万㎡)

売上高の9割を占める製本機器(商業印刷用・オフィス用の複合システム、ソフトウェア)製造のほか、システムインテグレーション(AGVやロボットを組み合わせたシステム構築)、Tシャツ印刷キット、キャンプ用品(テーブル、たき火台、鉄板など)の事業も展開する。

5面【先駆け板金業】ホリゾン(トルンプユーザー)24時間稼働のスマートファクトリーP2.jpg

堀英陽社長とパンチ・レーザ複合機 TruMatic 7000。同機はSheet Masterを搭載しローディング・アンローディングやソーティングが自動化されている。

必要なパーツを運ぶAGVやAMRが計十数台動き回り、大掛かりな生産ラインのわりに工場内に人が少なく、スマートファクトリーを絵に描いたような工場だ。製本機器事業ではトルンプの2Dレーザー加工機、パンチレーザー複合加工機、プレスブレーキを中心に20台以上の板金加工機や、マシニングセンタ、旋盤などの切削加工機を所有し、年間約700種・1万5000台の製本機器を製造。そのため1日に製造する部品は約2800個に及ぶ(材料38種、部品は1100種)。製本には紙折り、丁合(ページ揃え)、針金綴じ、糊綴じ(無線綴じ)、断裁――の5つの工程がある。ホリゾンはこの5工程を組み合わせて自動化した業務用機器を提供できる世界唯一のメーカーだ。

■加工性能を前提にした部品設計

製本機器の製造は、部品の安定的な精度の高さが前提となる。それを支えているのがトルンプの板金加工機の性能だと堀英陽社長は話す。

「トルンプの加工機の高い加工精度と安定した機能性は製造部門だけでなく、開発・設計部門も熟知している。たとえば一般に扱いが難しい16ミリ厚の材料をどこまでの精度で曲げ・切断できるのかを理解しているので、従来マシニング加工が必要とされる部品でも板金加工によって設計・製造ができる」

オペレーターの熟練度を問わず安定した品質での量産が可能となり、コストを抑えつつ生産性の高い製品づくりが実現できることになる。さらにトルンプが提案する生産管理ソフトウェア「Oseon(オセオン)」の果たす役割も大きい。Oseonは製造とマテリアルフローの両方を包括的に制御し、ユーザー固有の関連情報も包括してその制御を最適化する。採用した理由を堀社長はこう説明する。

「当社は多品種少量生産を基本とした内製体制を築いてきたが、昨今のユーザーニーズや市場環境の変化のスピードは著しく、段階的な自動化の延長線上の改善では限界を感じていた。ハード面の自動化だけでなく、情報の流れを最適化・自動化することが不可欠で、その要としてOseonを採用した」

24時間体制での設備稼働率が向上し、現在パンチレーザー加工に関しては65~70%に高まった。「近くさらに80~85%へ向上させる。加工状況や段取りの進行がリアルタイムで可視化されるようになり、リードタイムの短縮や、作業の属人化の解消にもつながっている」と見る。

■製本数減るも質へこだわり

デジタルが浸透し、製本のニーズは減少傾向にある。この現状を堀社長はどう見るのか。

「たしかに印刷ボリュームは減りつつあるが、書籍のタイトル数からも見られるように種類はむしろ増えている。カタログ類については作るのなら良いものを作ろうと質へのこだわりが増している。この流れは当社の戦略と合致する。日本だけでなく、堅調な欧米・アジアに向けても拡販していく」

同社は1946年、電気器具の試作・修理を生業として創業。73年に卓上製本機を世界に先駆けて開発した。以来、製本関連機器の総合メーカーとしてスタートを切った。1990年代には同製品大量部数最盛期を迎え、「週刊少年ジャンプ」の発行部数は1994年に史上最高の653万部を記録した。その頃から時代のニーズに応えながらも、既にオンデマンド(小ロット生産)にも可能性を見出し、商品開発を進めてきた。徐々に内製体制を強化し多品種少量生産を基本とする姿勢を築いてきた。

堀社長はスマートファクトリーの機能をさらに強化する考え。「人と機械がともに働く工場を実現すべく、トルンプの協力を得ながら、すべての板金加工工程の自動化・省力化に取り組み、AIの導入も進めていく」と意気込む。

5面【先駆け板金業】ホリゾン(トルンプユーザー)24時間稼働のスマートファクトリーP3.jpg

【写真右】多様な製本機器を揃えるショールームで打合せをする堀英陽社長と【写真左】服部康明ゼネラルマネージャー

(日本物流新聞2025年6月10日号掲載)