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扉の先107/ヤマト、「何でもやる」を地で行くSIer
- 投稿日時
- 2026/02/25 15:39
- 更新日時
- 2026/02/25 15:45
社内の本音トークが止まらぬ設備の鍵
自動化において「何でもできる」と謳うSIerは多いが、それを文字通り完遂できる企業がどれほどあるだろう。少なくとも大阪市のヤマトは「何でもできる」を地で行く。祖業はパーツフィーダ製造。だが今の同社に部品供給の専業だった面影はない。供給装置の有無を問わず、設計・製作・制御の総合力で高難度のシステムを具現化している。

新開発の「ランドフィーダ」は2Dカメラとシンプルなロボットでワークを整列・供給させる
強みは様々な工程を自社で完結させる内製率と、豊富な引き出しだ。例えば数十mにおよぶリニアソレノイドバルブの組立工程。過去納入したこのラインでは20種類以上の部品を整列・供給し、幾台ものロボットやサーボプレスで組み付け、ロボは時に5つのハンドを切り替えながら検査を経て完成品を排出する。特筆すべきは複雑な構成要素——フィーダ、フレーム、コンベヤ、ハンド、検査装置、配線——をほぼ内製する点だ。「仕様変更やトラブルに即座に対応できる。この対応力が強み」と生産本部の今出智美執行役員は語る。
対応するワークの幅広さが懐の深さを裏付ける。0.6×0.3ミリの砂粒のようなチップコンデンサーを毎分8000個も供給・検査するシステムの傍ら、3㍍の鋼材をロボットで仕分けるダイナミックなラインも手がけた。「小さい物に強い」「大きい物に強い」「〇〇業界が得意」といった枠から同社は明らかにはみ出ている。「強いのはハンドリング全般。ニーズに合わせてほんまに何でもやります。社内も『やったことないけど面白そうやからやってみよか!』という感じの人ばかりで」トータルアドバイザーの根本春佳さんがそうまとめた。
■設計と現場が火花を散らす
創業43年目だが創業時から取引が続く顧客も多い。提案の幅広さで信頼を得ているが、それだけでもなさそうだ。営業本部の佐藤伸彦執行役員は「同業と比べ納期は断然、早い。というのも内製率が高いから」と語る。
短い納期に収めるために現場は本気だ。同社では製作途中に設計と製造の担当者が本音でぶつかり合う光景が日常茶飯事だという。今出執行役員は「ヨソからすると喧嘩に見えるようですが」と笑うが、実はこれこそ机上の空論から脱して使いやすく止まらない設備を作るのに不可欠なプロセス。製作中に設計と製造が本音を交わし、その場で改善することでチョコ停は最小限になる。
それでも予期せぬトラブルが起こるのが一品物の常だが、同社は現場で即座に加工・修正を行い“執念で”稼働させる。この現場力を支えるのが社員の多能工化。メカの組立担当がロボットのティーチングをこなし、ティーチング担当が配線や工事を行うことも。根本さんは「誰かを呼ぶと間に合わない場合もある。そういう空白を作らない」と強調した。
近年は自動車業界で培った技術を食品や化粧品業界へ水平展開。さらに、カメラとロボットを組み合わせた「ランドフィーダ」や、パレット交換を自動化する「パレ蔵」など、自社開発のパッケージ製品を核にした提案を加速させている。
ランドフィーダは振動でバラ積みワークの重なりを無くし、ロボットが2Dカメラで向きを判別して整列させる製品。従来のフィーダが苦手だった「極薄モノ」も扱えるうえ、簡素なロボットを使うため費用も安価だ。こうした製品とロボット等を組み合わせた提案型ビジネスで成長を手繰り寄せる。

右から生産本部製造本部 今出智美執行役員、根本春佳トータルアドバイザー
(日本物流新聞2026年2月25日号掲載)