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ジダイノベーター Vol.29/エムジオット
- 投稿日時
- 2025/02/12 10:32
- 更新日時
- 2025/02/12 10:36
集塵機をIoT化のプラットフォームに
9年以内にコストメリット
「IoTのプラットフォームとして、たまたま集塵機だった」とエムジオットの若き創業者・中井貴暉社長(32歳)はいう。ソフトウエアに開発リソースを「全振り」することで集塵機に「ゲームチェンジ」(中井社長)を起こせるか、不必要な機能として淘汰されるか「5年で市場にジャッジされる」と覚悟を見せた。

小型集塵機エムジオット
「世界初のIoT集塵機」を謡う小型集塵機エムジオット(社名と同じ)の特徴はLTE通信機能を搭載し、既存設備に重大な異常が発生した場合、異常信号を受け取り、ユーザーのスマホやPCに通知する「プチIoT化」にある。同社が参入した小型集塵機の用途は、コンデンサーの切断時の異物(乾燥粉塵)などを吸引する局所的な作業に使われる。「PLC不要で遠隔操作」「メンテナンス履歴の保存」のほか、フィルターが詰まった時など、何らかの異常が発生した際、作業者のスマホやPCにバナー通知を送る「バナー通知機能」をストロングポイントに開発されていた。「『バナー通知機能』を応用できるのではという気づきがあり、周辺機器に異常が起きた場合、繋がっている集塵機に電圧をかける設定をしておくことで異常を検知できる。異常だけでなく作業が終わったことをトリガーにもできる」とし「集塵機はプラットフォームで、ソフトウエアをアップデートさせればいくらでも進化させていける」とする。集塵機そのものにこだわりは?と記者が問うと「早く、誰でも作れる製造性の良さにはこだわっているが、そのほかは能力、耐久性など他社の集塵機と遜色なければそれでいいという設計思想。ハード面の基本的な機能で既存メーカーに勝とうとは考えていない」とする。
■ソフトウエアで常に進化させる
2020年に集塵装置(集塵ノズル)の設備会社を経営していた父が倒れた。父の会社を引き継ぐという選択肢もあったが、それではソフトウエアの開発に注力できないと考え、23年に別会社を立ち上げた。
「たまたまプラットフォームが集塵機だったというだけで基本的にはソフト開発企業だ。私には父の会社の知見があった。そして集塵機をプラットフォームにしようとは、これまでだれも考えていなかった」とする。
同集塵機の初納入は24年の10月。年間600台が目標で2年以内に達成したいと意気込むが「別に既存のところでいいじゃん」とのユーザーの反応の壁が立ちはだかる。
同商品は既存品より価格面では3~4割割高だ。「ユーザーの考え方次第だが、例えば、集塵機が壊れた場合、気づくまでの製品に不具合が出る。こうしたトラブルを防ぐことをメリットと考え、シミュレーションすれば、遅くとも9年以内に既存品よりコストメリットが出る」とする。
「自分の考えが合っているか、間違っているかはこの5年で市場にジャッジされるだろう」とほほ笑んだ。
中井貴暉社長
(日本物流新聞2025年2月10日号掲載)