モノづくり変革期に欠かせない生産財

アジア、とりわけ中国がけん引してきた工作機械業界

半導体・EV関連投資がチャンス

アジア、とりわけ中国がけん引してきた工作機械業界。だが昨年の中国は実質経済成長率3.0%と目標を達成できなかった。12月のゼロコロナ政策の撤廃でマーケットは混乱し、春節の影響もあり例年以上に投資を控える動きが出た。近年は米中貿易摩擦、半導体輸出規制、コロナ禍、環境問題などが重なり、成長が緩やかだ。だが、ポテンシャルは依然大きいと見る向きは多い。

中国は電動車消費の先進国だ。昨年のNEV(新エネルギー車)販売は689万台。新車販売全体(2686万台)の25%を超える。中国福建省の生産拠点で新工場を今年1月に稼働するなど中国での製造・販売を強化するソディックは「今年は700万台を超えると思う。カーボンニュートラルが世界的なキーワードになっているから、NEVが伸び続けるのはまちがいない」(機械営業統括部の荻野隆介副統括部長)と話す。

(一社)日本工作機械工業会は昨年の受注総額1兆7596億円(暦年としては過去2番目)を踏まえ、今年は1兆6000億円と予測する。稲葉善治会長(ファナック会長)は「世界経済は停滞するも(受注額は)高めの水準を保っている。製造各社はデジタル化などの対応に迫られ、中期的には半導体プロジェクトやEV関連の投資もある」と高水準が続くと見る(2023年2月21日の月例会見で)。

高まる5軸比率

そのEVをめぐっては加工する部品点数が2/3程度に減るとみられる一方で、チャンスもありそうだ。性能に直結するモーターコア金型やバッテリー関連など高精度と量産が求められる部品には日本製加工機が活躍すると期待されるからだ。部品は微細化、複雑化、一体化が進み、自動運転の広がりとともに増えるセンサーやカメラに対する需要も出てきている。

自動化による高効率生産のニーズも高まっている。多軸制御はその有力解の1つだろう。日工会がまとめる立形マシニングセンタ(MC)の受注額に占める5軸機の比率は高まっており、2022年は35.3%と3台に1台以上は5軸機ということになる。

立形MCの受注額に占める5軸機比率が9割超のメーカーもある。松浦機械製作所だ。長時間無人運転をウリにする同社の22年の5軸機比率は実に91.9%に高まった。製品ラインナップはハイブリッド金属3Dプリンターを含め全27機種。そのほぼ半数の13機種を5軸仕様とすることと、欧州(売上高の36%を占有、2022年)、北米(同36%)の売上比率が高いことが5軸比率を高めた。

人手不足も相まって5軸機+パレットシステムあるいはローダー、ロボットの活用は今後も高まるだろう。

工作機械×IoT

工作機械はハードとしての性能よりもデジタルでの統合制御に関心が向くようになった。JIMTOFでは2018年に出展された工作機械を繋いで見える化することを日工会が直接提案した。個々のブースでも会場の東京ビッグサイトと地方にある工場を繋いで制御する様子を大画面で示す例もそう珍しくなくなってきた。

日工会の稲葉会長は工作機械のIoT化は今後のJIMTOFでも大きなテーマの1つになるとし、「これからはモノからコトへではなく、モノとしての工作機械とコトを実現するためのIoT、AIとの組み合わせを日工会として促進していきたい。両方が揃わないとモノづくりはできない」と言う。

出展機を繋げて見せるのはJIMTOFだけではもちろんない。19年のEMOショーでは20社のメーカーの100台のマシンが17のITシステムに接続された。9月にドイツ・ハノーバーで開かれるEMOショーでも出展機のライブ接続が予定されている。ドイツ工作機械工業会(VDW)などが17年から国際的なコンソーシアムとしてオープン言語を使ったインターフェースの標準づくりに取り組んでおり、EMOショーで用いられたインターフェース規格umati(universal machine tool interface)はその成果だ。日本からも三菱電機やファナック、村田製作所などが参加している。

umatiにはハードウェア機器同士を接続するためのコネクターに関する形状の規格や送受信の方法、ソフトウェア間でデータのやり取りをする際の形式(API)を共通化する技術が含まれる。基本的に無料で誰でも使えるインターフェースなので、これに対応した機器を設備するなら中小企業でも自社工場をスマート化することができる。だが、個々のメーカーが用意するインターフェースも種々あり1本化するのは簡単ではなさそうだ。

(日本物流新聞 2023年3月10日号掲載)

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