中国「景気回復力」を探る〜「沈黙の巨龍」いつ目覚める?〜

成長率鈍化に若年層失業率の記録的上昇、外国投資の減少、輸出と通貨の低迷、不動産危機…とかくマイナス要素がクローズアップされる昨今の中国経済。しかし、14億人を抱える巨大市場は依然として高い潜在能力を秘めている。だが、景気回復、上昇はいつになるのか。様々な角度から探ってみた。

【画像1】タイトルイメージ
【画像2】シャオミ「SU7」

中国国家統計局のデータをみると、相変わらず景気は減速しているが、下げ止まりの兆しが見え始めてきた。2024年1~3月期の実質GDP成長率は前年比5.3%と前期より増加幅が拡大した。業種別では、不動産業の前年割れが続いた一方、製造業が伸びを拡大し、全体を押し上げている。

4月のPMI(購買担当者景気指数)は製造業、非製造業とも低下したが、いずれも景況感の境目と言われる50を上回っており、こちらも改善の兆しが見え始めた。また3月の固定資産投資(年初来累計値)は、前年比4.5%増と増加幅が拡大した。不動産開発投資は大幅な減少が続いた一方、インフラ投資は伸びが拡大した。一方で外資企業の投資は前年比10.4%減と大幅な減少が続いており、脱・中国の動きは引き続き継続している模様だ。

消費に目を向けてみると、3月の小売売上高(名目)は前年比3.1%増と増えてはいるが、弱い動きが続いている。内訳をみると、消費財(前年比2.7%増)、飲食サービス(同6.9%増)となっている。特に消費財の約1割を占めている自動車は3.7%減と8カ月ぶりに前年割れに転じている。これに伴い、3月の消費者物価は前年比0.1%増と低い伸びにとどまった。

その要因として挙げられるのが自動車に代表される耐久財価格の下落だ。2024年4月25日から開催された北京モーターショーにおいて、家電大手からEVに参入した「小米科技」(シャオミ)は、3月末に発売した高性能EV「SU7」が28日間で7万5000台以上を売り上げたと公表した。

同車はサーキットでのパフォーマンスにおいて、ライバルのテスラはおろか、ポルシェを上回る性能を示した。にもかかわらず、価格は約30万元(約620万円)と高いコストパフォーマンスを誇る。一方で中国メディアが指摘したのは、シャオミの異様とも言える販売戦略だ。発売価格を抑制した結果、1台売るごとに約15万円の赤字が出ているという。

シャオミ「SU7」

供給力過多とも言われる現在、シャオミのみならず中国の地場EVメーカーはいずれも大幅な値下げ販売を断行しており、テスラや日系含む外資メーカーも値下げを余儀なくされた。

その結果、中国自動車工業協会が4月11日に発表した4月の新車販売台数は、前年同月比9.3%増の235万9000台と大きく伸長。メーカー間の過度な値引き競争が背景にあるとはいえ、一時的な需要回復を果たしているのも事実だ。

緩やかな回復に留まる

この流れに苦戦しているのが日系メーカー各社だ。トヨタは前年比27.3%減、ホンダは22.2%減、日産は10.4%減と大きく販売台数を落としている。

世界的なEVブームの失速はあるものの、すでに中国における自動車市場はEVありきのものとなっており、このジャンルに弱い日系メーカーが今後巻き返しを図るのは容易ではない。

景気回復のカギを握ると言われている不動産市況への政府テコ入れだが、市場全体の活性化には程遠く、正常化には厳しい道のりとなる。

今後、劇的な回復は見込みづらいのが現在の中国経済ではあるが、半導体を中心とした需要が2024年末から2025年にかけて回復すると見る向きも少なくない。米輸出規制の影響で半導体の国産化を急ぐ同国が、規制の対象外となる旧世代機の輸入を強化しているからだ。

日本半導体製造装置協会の河合利樹会長(東京エレクトロン社長)は年初に、中国の半導体業界について「予想以上に積極的。規制の影響を受けにくいところで投資が行われている」と述べている。

こうしたレガシー半導体の需要増を契機に、一定の景気回復が見込まれている。また、一時的に不況だった再生可能エネルギー関連の需要も年末にかけて伸長が見込まれている。かつてコロナ禍明けすぐに、風力発電などで日本工作機械メーカーへの需要が大きく高まった。その再来とはいかないまでも、一定の受注が確実に生じてくると見ていいだろう。

これまでの急成長とは違い、今後2030年までに「緩やかな景気回復」が見込まれる中国経済。その成長を牽引するのはEVなのか、エネルギー関連なのか、半導体関連なのか。かつて「米国がくしゃみをすると日本が風邪をひく」と言われてきたが、現在は「中国がくしゃみをすると日本が風邪をひいて、東アジア及びASEAN諸国が肺炎になる」という時代。中国の景気動向・需要動向を見極めたビジネス判断が求められる。

〔関連記事LINK〕(日本物流新聞ONLINEにリンクします)

【中国】現地の「リアル景況感」(山善 中国支社 森井 郷 支社長)

(日本物流新聞 2024年5月15日号掲載)

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