充実する協働ロボット・AGV・エンドアームツール
【画像1】タイトルイメージ
【画像2】ヤマハ発動機
【画像3】ファナック、テックマンロボット
【画像4】川崎重工業、THK
【画像5】OnRobot Japan、北川鉄工所、シュンク・ジャパン
製造業はコロナ禍から回復し生産量が増加しており、まさに飛躍のチャンスだ。ただ、受注は好調ながら部品不足から生産設備の納期が長くなる傾向が続いている。大手鍛圧機械メーカーのトップは「サプライチェーンの問題があって、このパーツがないから出荷できないという状況が2年くらい続いている。これがどのようにしていつ解決するのか教えてほしい」と不安を口にし、不透明感に不満を抱く。「当社の場合、通常半年かかる納期が今は1年かかる。ここまで長期化すると納入時に為替がどうなっているのか、まったく読めない」と嘆く(9月中旬)。
教示しやすいアームで溶接・ねじ締めも
そうは言っても生産増強に向け、またコロナ禍を受けての非接触ニーズや人手不足対策もあって自動化設備に対する関心の高さは衰えない。バリエーションがますます豊富になった協働ロボットやマテハン向けの産業用ロボット・AGV、不定形物を確実に掴むエンドアームツールなどが充実している。
協働ロボットを最も充実させているのはファナックだろうか。緑色のCRシリーズ(6機種)とダイレクトティーチングできる白色のCRXシリーズ(5機種)の全11機種に広げた。これらは様々な産業に活用でき、たとえば「CRX-10iA」(10kg可搬)にトーチを持たせれば自動アーク溶接機になる。「アーク溶接は一般にティーチングが複雑になるが、人がアームを持って始点と終点を示せばレーザーセンサーが自動で移動経路を生成する。研磨作業も同様に行える」と言う。
長いリーチをもつファナックの協働ロボット「CRX-25iA」(25kg可搬)を使ったパレタイジング
この分野で最大手のユニバーサルロボット(本社デンマーク)は3?16kg可搬機で5万台以上の納入実績を誇る。いずれも教示しやすいシングルアーム仕様で、16kg可搬タイプを使えば140Nmまでの高トルクねじ締め作業などがこなせる。「一般の協働ロボットはねじが締まった時の反力でアームが停止してしまうが、当社のロボットは安全性はそのままに反力を受け流せる。設備構成をシンプルにできることから、完成車やサスペンションなどの部品づくりに使われている」と胸を張る。
急成長を見せる台湾テックマンロボットは4?16kg可搬の4機種を揃える。新たな用途としてパナソニックコネクトの最新フルデジタル溶接機(YD-350VZ1)とのパッケージ品を開発中。「溶接時に板厚の変化に合わせて電流を調整するといった細かな制御を、ロボットがインターフェースボックスを介して指示して行う」そうだ。
最新フルデジタル溶接機とパッケージ化したテックマンロボットの協働ロボット
スカラロボットとデジタル制御コンベアの印象が強いヤマハ発動機が開発中の7軸制御タイプ(10kg可搬)は、全軸にトルクセンサーを付けて安全性を高めている。「コンベアやスカラロボットをこの垂直7軸と組み合わせることで、搬送から組立までトータル提案できるのは当社だけだろう」と自信を見せ、協働ロボット分野への参入を表明する。
ヤマハ発動機の7軸協働ロボット(右)とスカラロボット&デジタルコンベアの組合せ
マテハン向けロボ・AGV
活躍の場が急拡大しているのはマテハン分野だ。川崎重工業が新たに提案を始めたのはデバンニング・ピッキング・パレタイズ工程の自動化。AGVと一体化したデバンニングロボット「Vambo」は3次元AIビジョンでコンテナからサイズの異なる段ボール箱を取り出してコンベアに載せる。「80kg可搬の多関節ロボットとAGVの組合せはまずない」とし、作業の進行に合わせてAGVが進んでコンテナの奥にアクセスする。
川崎重工業のVamboは傾いた荷物も取り出すことができる。
10mmの段差を乗り越えるTHKのAGV(20年9月発売)はQRコードに似た独自開発のサインポストを使うことで自動走行する。従来の磁気テープ式やSLAM式だとレイアウト変更ごとの作業負担が大きかった。「反射素材を組み合わせたサインポストを使えば、高解像度カメラを使わずに20m離れた距離から認識するため、急なレイアウト変更もサインポストの位置を変えるだけで対応できる」と言う。
THKのAGVはその上方右にあるQRコードに似たサインポストで自動走行する。
確実に掴むエンドアームツール
柔軟物や凹凸表面も難なく掴めるエンドアームツールが揃ってきた。OnRobot Japan(本社デンマーク)のパレタイズ用「2FCP20」は挟み込みとバキュームを組み合わせた2WAY仕様。「閉じられた段ボール箱は吸着で、開かれた箱はハンドでと用途に応じて使い分けられる」とし、これに100kgを持ち上げられる昇降機とパレットステーションをセットにして提案する。
パレタイズ用に開発したOnRobot Japanのエンドアームツール「2FCP20」は挟み込み(使用中)とバキューム(右側面で待機中)の2WAY仕様
北川鉄工所のエアー式測長ハンド「NPGT-S」は運びながらワーク長を測定する。±2ミクロンまで測定できる精度が特長で、把持した時に長さや径のわずかな違いを判断して適切な場所に運んで置くことができる。
北川鉄工所のエアー式測長ハンド「NPGT-S」
シュンク・ジャパンが4年ほど前に発売した5本指の「SVH」は実に20もの関節をもち、指は横にも動く。ここまで人の手に似たものが必要かと思えるが、「丸いものの重心をハンドの中心で掴める」とメリットを挙げる。価格は1千万円を超え(関節数を減らして300万円ほどに抑えた廉価版も)、日本には研究用に年に1、2台売れるにとどまっている。
20関節をもつシュンク・ジャパンの「SVH」
ハンドやチャックなどロボット周辺機器を多数用意する近藤製作所の非接触ロータリージョイント「RJM」は、ロボットアーム先端とその先をつなぐ。「情報も電力も非接触でハンド側へ送れるので、ハンドを360度以上回転させても電源コードなどが絡まることがない」と言う。
(日本物流新聞 2022年9月25日号掲載)