2022国際ロボット展レポート<2>

東京ビッグサイトで3/12までの4日間開かれた「2022国際ロボット展」に62,388人が訪れた(オンライン展は3/18までの18日間)。コロナ禍の影響で前回(2019年、141,133人)の4割強の来場者数となったが、バリエーションがますます豊富になった協働ロボットや用途が拡大する産業用ロボットなどをメーカーやインテグレーターが多数実演展示した。

【画像1】タイトルイメージ
【画像2】人機一体/ヤマハ発動機
【画像3】川崎重工業
【画像4】オークラ輸送機/川崎重工業
【画像5】THK/ヤマハ発動機

他業種へのロボット活用広まる

医療、建設現場へ

人機一体の「零式人機」

今回のロボット展では製造業以外へのロボット活用提案も数多く見受けられた。
人機一体はJR西日本、日本信号との共同プロジェクトとして開発した高所作業用ロボット「零式人機」を展示。オペレータがVRゴーグルで確認しながらロボットを操作し、高所作業を行うデモンストレーションを披露した。
双腕ロボットの全関節にはトルクセンサーを内蔵。両手での協調作業も得意とする。デモでは金属パイプを片手で持ち上げてから両手で扱ってみせた。
「高所作業車に乗せての活用を想定しており、作業者の安全を確保しながら鉄道や道路など、インフラ設備におけるメンテナンス効率を上げることが出来る」(人機一体)

ヤマハのタフネスロボットアーム

ヤマハ発動機は雨や粉塵、振動に強い「タフネスロボットアーム」を展示。激しい雨と車の揺れを再現したブース内で力強い動きを見せた。
「ロボットアームのみならず制御ユニットと電源ユニットもIP56相当の防塵防水性能を付与している。また耐振動で4G、耐衝撃で10Gを確保しており屋外でのさまざまな作業に対応できる」(ヤマハ)

動作温度はマイナス10〜55℃までと幅広く、炎天下や寒冷地での屋外作業も可能。現在は農作業において実証実験が行われているが、今後は漁業や建設業、災害現場などにおける活用も視野に入れている。

介護現場で活用を見込む「RHPフレンズ」(川崎重工業)

川崎重工業は手術支援用ロボット「hinotori」や自動PCR検査ユニットなど、従来人手が必要な現場に対し、数多くのロボットを提案した。なかでも連日注目を集めていたのが、自立歩行可能なヒューマノイドロボット「RHPカレイド」と介護などに活躍する「RHPフレンズ」、ヤギ型の4足歩行ロボット「RHPベックス」によるデモンストレーションだ。

ヒト型を模したRHPカレイドは身長179cm、体重83kg。ベンチプレスで60kgを持ち上げられる。高所作業を模したデモでは、人と連携しながらの点検を行って見せた。

4足歩行の「RHPベックス」(川崎重工業)

4足歩行ロボット「RHPベックス」の最大可搬重量は100kg。実際に人が跨って乗ることも可能。制御は横浜のガンダムファクトリーにおいてガンダムの制御にも携わったアスラテックの「V-sido」を採用。人間による指示とロボットのセンサー情報から歩行動作をリアルタイムに生成し、安定した4足歩行を実現する。デモでは農業における収穫作業を再現して見せたが、今後は建設現場などでの活用も見込んでいる。



需要拡大マテハン・AGV

ボトルネックを打開

あらゆる分野で活躍するマテハン機器。自動化の流れの中でものの搬送の自動化は最重要課題のひとつであり、その重要性は日に日に増している。今回のロボット展では特設のマテハンブースが設けられるなど、その活況ぶりを肌に感じた。

人手不足などの問題に端を発し物流業界は急速な自動化が進んでいる。一方で、入荷・出荷工程ではまだまだ人の手を必要とする場面が多い。そうしたボトルネックとなっているデバンニング(荷降ろし)、パレタイジング/デパレタイジング工程に対する総合的な提案をしたのが、オークラ輸送機と川崎重工業だ。

オークラ輸送機のデバンニング用ロボットシステム

オークラ輸送機は「スマートデバンニング&パレタイジング」をテーマに展示した。佐川急便を中心に産学連携で開発中のデバンニング用ロボットシステムは画像認識技術やAIによって荷物のサイズを判別し、鉄道コンテナやウイング車から毎時500個の荷降ろしを実現する。2022年度中に開発を終え、23年4月の販売開始を予定している。パレタイジングロボットは荷降ろしされた異なるサイズの荷物をうまく組み合わせて積付けを行う。パレットはもちろんのこと、カートラックやカゴ車にも対応。ロボットが荷物のサイズを検知し、カートラック上部のカメラが荷物の位置を把握する。積み付けられた荷物はカートラック牽引用のAGV「OKURUN(オークラン)」によって運ばれる。オークランはカートラックを自動連結し、目的地へ運ぶ。レーザセンサで周囲の環境を把握しながら自律走行する(最大可搬質量200kg)。

川崎重工業のVamboは傾いた荷物も取り出すことができる

川崎重工も同じくデバンニング・ピッキング・パレタイズ工程の自動化を提案した。業界初となるAGVと一体化したデバンニングロボット「Vambo」は3次元AIビジョンを用い、コンテナからサイズが一様でない段ボール箱を取り出してコンベアに載せることを想定。「80kg可搬の多関節ロボットとAGVの組合せはまずない。取出しが進むのに従って奥にアクセスする必要があるのでAGVは必須になる」と言う。荷降ろしされた荷物はビジョンでサイズを認識し、パレタイジング用ロボットによってサイズごとにパレットに移し替えられる。出荷工程においても、段ボールの組み立てからピッキング、パレタイズまでの工程の自動化提案がなされた。



AGV活況

会場で特に多くの提案が見られたのがAGVだ。物流業界だけではなく、製造現場の工場内搬送にもAGVの活用が進んでいるためだ。そうした中、独自開発のAGVが目を引いた。

THKは独自のサインポストを認識して走るAGVを提案した

THKの10mmの段差を乗り越えるAGV(20年9月発売)はQRコードに似た独自開発のサインポストを使うことで自動走行する。従来の磁気テープ式やSLAM式だとレイアウト変更ごとに作業や費用で問題があった。「反射素材を組み合わせたサインポストを使えば、高解像度カメラを使わずに20m離れた距離から認識するため、急なレイアウト変更もサインポストの位置を変えるだけで対応できる」と言う。

実際の鋳造現場で使用されているヤマハ発動機のAGV

ヤマハ発動機は過酷な現場でも使用できる無骨なAGVを提案した。「COW-el」は現場の声から生まれたカスタム可能な組み立て式AGVだ。従来のAGVが磁気テープを使用するところ、本製品は一般的なビニールテープで代用する。機体への指示も一般に普及している2次元コードを使用するため、扱いやすい。導入環境に合わせて機能選択・組み立てが可能。同社では鋳砂を使用する鋳造現場で運用されており、これまでAGVが苦手としたタフな環境にも適応できる機体だ。

(日本物流新聞 2022年3月25日号掲載)  2022国際ロボット展レポート<3>につづく

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