サービス形態の多様化、生産財も

必要なときに、必要な分だけ使いたい。時期によって仕事量が大きく変動する事業者にとって、できるだけ設備購入を避けたいのが本音だろう。レンタル、シェアリングに代表されるサービス形態の多様化は、生産財業界にも広がっている。

【画像1】「t-Sort」の実績のなかには、物流センターでの仕分け作業エリアの課題であった天井空間を有効活用する事例も

必要なときに、必要な分だけ

物流ロボットのサブスクリプションサービスを展開するプラスオートメーションは、昨年9月からソーティングロボットシステム「t-Sort」のRaaS(Robotics as a Service)として月額30万円から利用できるスターターパックの提案を開始した。

利用者として想定するのは、倉庫などで仕分けの自動化を始めた事業者。t-Sortは、小型の無人搬送車の一種で、物流の搬送や仕分けができる。稼働実績は全国で1500台以上。従来の固定ソーターに比べて高い柔軟性と機動力とともに、省スペースで運用できる点が特長だ。

仕分け作業に必要なデータをCSV形式で準備し、独自開発のクラウド型庫内実行システム「+Hub」にアップロードすれば、いつでも利用できる。現場のセットアップは最短1日。申し込みから導入まで約1カ月で完了するという。

月額30万円には、ハード(ロボット5台と周辺機器)とソフト一式が含まれており、初期費用なしで1時間あたり約700ピースの仕分け作業を構築できる。3カ月から契約可能で、「スモールスタートや実証試験(PoC)にも活用できる」としている。

中国発のギークプ ラスは、2020年から日本で物流ロボットのシェアリングサービスを展開中。繁忙期に1カ月単位から短期レンタルを提供することで、トータルコストを最適化する狙いだ。常に変動するオペレーションニーズに合わせて、新製品を含めたラインナップから選択できる。

繁忙期ではなく、通常期に合わせて物流ロボットを導入し、初期費用を抑えられる提案も進める。例えば、ピッキングシステムを利用した場合、1~11月は購入した90台で運用し、12月だけ30台レンタルするといったイメージだ。「最大手としての事業規模を生かし、同業他社と比較しても合理的な価格で、波動(相場のうねり)に合わせて迅速化する」としている。

ロボットをもっと身近に

慣れていない事業者にとって二の足を踏みがちな産業用ロボットも、購入以外の選択肢が増えてきた。

高島ロボットマーケティングは、2020年8月から協働ロボットのレンタルサービスを始めている。最短1日から1日単位で使用可能。要望に応じて、レンタル時に設定した動作プログラムを同社が保管・管理するため、リピート時にも重宝する。

購入前の判断材料を目的としたトライアルだけでなく、動作プログラムの流用による臨時雇用の需要も見込む。展示会・イベントで数日間に限定して利用するケースも想定しており、導入プログラム開発を支援するパッケージも用意した。

昨年夏から協働ロボットのサブスクリプションサービスを開始したのは、ウィングロボティクスだ。月単位の契約で派遣する。導入時に必要なパーツの設定やプログラミングは、同社がすべて対応する。

協働ロボットは、動作を自動的に生成できるAIを搭載させ、周囲の状況を学習しながら、ぶつかることなく作業できる。「ひとつのロボットを工場内で自由に移動させながら、違った作業を行わせることもできる」ことから、多品種少量生産の効率化もメリットに挙げている。

北九州システムインテグレータネットワークは、参加する企業のもつロボット、AIソリューション、IoTソリューションなど様々な商材をサブスクリプションで提供するBtoB向けウェブサイト「Kitakyushu SIerNetDX Marketplace」を立ち上げた。

初期費用が高額で導入が進まなかった機材や価格が不明で問い合わせなどの一歩が進まなかった保守・教育サービスなどが広がりそうだ。ネットワークは登録商材やサービスを拡張し、見積書などが簡単に作成できるよう顧客のニーズに応えていく考え。「サブスクリプションではなく、従来からの売り切りの商材の取り扱いもあるので、それらの商材やサービスを活用した導入事例なども参考にしていただければ」としている。

ローカル5Gもレンタル

工場やプラントの設備に使用する通信環境もレンタルされる時代になった。オリックス・レンテックの実証実験パッケージは、ローカル5Gの利用に必要なシステムとシステム構築に必要なハードウェアをまとめて提供する。契約期間は最短3カ月。月額300万円に設定した。

自動制御、稼働監視、遠隔制御など、さまざまな分野で実証試験が行われていることから、昨年10月から開始した。MM総研の予測によれば、ローカル5Gネットワークを活用した国内サービス市場は、年率70%以上のペースで拡大し、25年には325億円に達するという。

拡大するなかで課題もある。オリックス・レンテックは、「実証試験の実施にあたっては、電波法上の無線局の免許申請や機器の選定など、一定のノウハウや大きな初期投資が必要」と指摘する。

そこでローカル5Gの環境構築に必要な機器をすべてまとめて、必要な期間提供するだけでなく、免許申請業務もサポートすることで、初期費用を抑えた実験実施に貢献する考えだ。

(日本物流新聞2022年1月25日号より)

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