《工作機械》プログラム、条件設定が楽に

ビジネスを展開するうえで、「モノ」の良さだけでなく、問題解決や用途開発などの「コト」を加えた提案が重要視されている。

【画像1】ヤマザキマザックのクラウドサービス「Mazak iCONNECT」
【画像2】中村留精密工業
【画像3】ナガセインテグレックスが今年10月以降のリリースを予定している研削加工支援アプリ(スマートフォン画面)

充実するサービスメニュー

ビジネスを展開するうえで、「モノ」の良さだけでなく、問題解決や用途開発などの「コト」を加えた提案が重要視されている。かゆいところに手が届くサービスもそうだ。生産財メーカーの経験を生かした具体的なメニューがさらに充実している。

中村留精密工業が昨年末から開始したのはプログラム作成請負サービスだ。「来月から加工する新しい製品をどうやって削ろう」「社内に加工プログラムを作れる人がいない」「加工プログラム作成が溜まっている」といった困りごとを解決する手段として提案する。

工作機械メーカーのノウハウと経験を生かして、加工工程の立案からプログラム作成まで対応する。請け負うのは、同社製品を使った加工プログラム。シミュレーション済みの完成度の高いものを提供するという。さらに、ツーリング・段取りシートも発行してくれる。

浮いた時間を段取りや次工程の準備に活用したり、他のプログラムの作成・改善の参考として役立てたり、といったメリットも挙げる。既存プログラムのサイクルタイム短縮も受け付けている。

同社WEBサイトの問い合わせフォーム、コールセンターから申し込める。作成代行にあたって、ワーク図面、ツーリングリスト、そのほか加工にかかわる情報を提出する必要がある。

中村留精密工業は機械の販売に合わせて、ワークに応じたプログラムを提供していたものの、納入時に「段取り替えしたいが、プログラム作成やタイム短縮を手伝ってくれないか」との要望を寄せられるケースが多くなってきたという。
中村匠吾専務によれば、「このような要望には柔軟に対応させていただいていた経緯があったが、お困りになっている方がより多くいるかもしれないと気付かれた」として、今回のサービスを立ち上げた。

段取り作業が複雑なうえ、熟練を要する研削盤でも支援する取り組みが加速している。ナガセインテグレックスがリリースに向けて準備を進めている研削加工支援アプリは、「研削未経験の作業者でも1週間で鏡面加工までできる」という。

材質、要求幾何精度、表面粗さ、加工時間などを入力すれば、推奨条件を教えてくれる。独自に開発した数学的アルゴリズムによって、条件を導き出すというもの。ユーザー独自のデータベースも作成でき、社内ノウハウの蓄積もできる。

長瀬幸泰社長は、「熟練者が近くでアドバイスしてくれるようなイメージ。当社のテクニカルセンター(試作・受託加工拠点)や生産ラインの知見がベースになっている」と話す。

利用にあたって、絶対運動特性、再現性、剛性、S/N比の高い機種を使うことが前提条件に。推奨条件を出すことで、熟練者並みの精度が出せるのも特長ながら、「考え、学び、成長できることに重点を置いた仕組みにしている」という。

「条件の選択肢を増やし、選んだ結果はどうだったのか評価できるようにしている。ノウハウのデジタル化だ。熟練者の方も一緒に利用いただければ、ノウハウの共有化に役立つ」

モニター期間を経て、今年10月以降の発売を予定しているそう。「サブスクリプション(定額サービス)だけでなく、利用状況に応じて様々なメニューを用意するつもり」としている。

拡充するクラウド利用

これまで訪問や対面が当たり前だったメンテナンスなどのサポートも、コロナ禍で移動が一時制限されたことで「遠隔で受けたい」とのニーズが高まっている。そこでヤマザキマザックはクラウドサービス「Mazak iCONNECT」を拡充。最新CNC「MAZATROL SmoothAi」搭載機を対象に、2020年12月販売分から、これまで有償だった専用通信機器を標準装備させ、3年間無料でサービスを利用できるようにした。

顧客、工作機械(同社製)、サポートセンタをクラウドネットワーク技術でつなげることで、生産性を高める総合サービス。携帯電話回線を使用することで、複雑な配線作業を不要にした。

専用ポータルサイトから稼働状況を確かめられるほか、CNCデータバックアップ、定期点検管理、ソフトウェアダウンロード、稼働履歴情報などのサービスが受けられる。写真やビデオをチャットで共有することで、技術担当者に機械の状況を伝えられる機能も備えている。

新たにアップデータする機能「ミル主軸パフォーマンス診断」は、定期診断で異常が見つかった場合、通信機能を利用して、サポートセンタから遠隔で、より詳細な診断を受けることでダウンタイム削減を可能にした。これまでは「ヤマザキマザックの技術者が専用の装置で診断していた」という。今後、稼働監視や保守管理に関するサービス機能を拡充する予定だ。

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