モノづくり、上昇気流に乗れるか

モノづくりを取り巻く変化がポジティブ、ネガティブの両面でスピードを増している。ここ数年注目を集めるIoT、AI、5Gは実験施設が相次いで稼働。実証から実装段階に移行し、それらをいかに効果的に活用できるかどうかが製造各社の成長を左右し、また人手不足を補う手段にもなる。

工作機械受注、今年1.2兆円へ

強力にけん引する中国市場

世界各地で新型コロナウイルスが再び猛威を振るっている。未曾有の厳しい曲面が1年以上続くが、日本の工作機械受注は内外需とも昨年5月あたりを底に緩やかな増加傾向が続いている。

内需では半導体製造装置やロボット、ローダー、搬送機等の自動化設備、医療関連、各種コネクターや金属部品など、幅広い製品用途で需要の増加が見られる。一方で内需よりも力強い外需は、アジアでの需要増が顕著だ。とりわけ中国向けは一般機械や自動車、電気機械といった中核業種で軒並み受注額が増加。また韓国、台湾、インド向けも上向いている。ただ、北米向けはジョブショップや自動車など、また欧州向けも医療や在庫が掃けた商社・代理店などからの受注が見られるも、コロナ禍を受けての経済停滞や先行き不安が大きく影響し伸び悩んでいる。

年央にかけて伸び続けるか

こうした状況を考慮し(一社)日本工作機械工業会(会長=飯村幸生・芝浦機械会長)は年初に2021年の受注見通しを1兆2000億円(前年比33%増)とした。リーマンショック後、2011~19年まで9年続いた1兆円超えは、コロナ禍の影響を大きく受けた20年(9018億円)でいったん途切れたが、持ち直しつつある。掲げた1・2兆円の受注見通しについて日工会は「業界内外から様々な反響が窺えるが、昨年後半からの増加基調を着実に捉えることで、見通し達成の展望が開けてくる」と期待する(1月末)。

当面の見通しはどうか。会員ヒアリングをまとめた日工会は「中国市場では幅広い業種で工作機械需要が高まっており、強靭な国内市場の形成を標榜する政府の後押しも窺える。年央にかけて引き続き活況が続くとみる向きが強い。また、新政権による経済政策の効果が期待される日米をはじめ、欧州やインドなどでも緩やかな景況改善が進む」としている(1月末)。業種別ではデータセンター増設やテレワークの普及、巣ごもり需要、次世代携帯端末の製造などが追い風となり半導体製造装置関連需要が高水準で推移すると見込む。また自動車産業でも新車販売の回復を受けて、「これまで先送りされていた案件の成約が進むとともに、EVやHVの製造、コネクティビティーや自動運転の追求、MaaSの可能性を探る動きなどが徐々に設備投資に結びつく」と期待する。

EVで新たな需要も

EVに絡んでは金型が大型化し、それを短時間で削れる新たな工作機械需要が増すとDMG森精機の森雅彦社長は言う。「EVの航続距離を伸ばすには軽量化が欠かせない。そのために今まで金属製だったボディをプラスチック製にするとなると、プレス金型から(大型の)プラスチック金型に変わる」と見る(2月12日のオンライン会見)。

90度旋回する主軸で立形(上面加工)・横形(側面加工)機能を1台で両立する5軸マシニングセンタD2をもつ牧野フライス製作所は、それを市場投入した理由として「金型の主たる消費産業である自動車業界は大きな転換期を迎えている。従来の金型加工は金型上面の形状部と側面の構造部で加工工程が分けられることが一般的だったが、近年、金型構造の複雑化や高精度化により、分割工程をまとめ加工することが求められている」と説明する(2月12日、書面回答)。

市場を広げる話題はほかにもある。DX(デジタルトランスフォーメーション)やCX(カスタマートランスフォーメーション)、カーボンニュートラルなどの環境対応は工作機械業界にとってもちろん無縁でない。これらへの対応は機械メーカーにとって大きな訴求ポイントとなるだろう。加工精度を飛躍させた加工機は医療・半導体分野向けで活躍し、台頭する新興国を引き離すことになるだろう。ロボット・測定機との組み合せ、AM(Additive Manufacturing=積層造形加工)、超短パルスレーザー加工など非切削の新領域に踏み込む工作機械メーカーも目につくようになった。

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