マテハンカクメイ〜インタビュー<1> コントローラーのUI高め産ロボのさらなる普及へ

モーションプランニング技術を活用したロボットコントローラーを開発し、産業用ロボットの「知能化」を可能にしたMujin。次代のユニコーン企業との呼び声も高く、旺盛な自動化需要を追い風にFA・物流分野で年々存在感を高めている。そんな同社が中長期的に見据えるビジョンを、マーケティング&コミュニケーション部の石原優月部長に聞いた。

【画像1】タイトル画像
【画像2】Mujin マーケティング&コミュニケーション部 部長 石原 優月 氏
【画像3】ロボットの脳にあたるMujinコントローラーが、アームやハンド、3Dビジョンジステムなどをコントロール
【画像4】Mujin の登場によって、物流現場のような多彩なワークを扱う現場のロボット化が進んでいる

コントローラーのUI高め産ロボのさらなる普及へ

   Mujin マーケティング&コミュニケーション部 部長 石原 優月 氏

●本紙:事業概要を教えてください。

◎石原:ロボットの脳にあたる『Mujinコントローラー』が事業の核です。国内の主要ロボットメーカー社に対応しており、ロボットに接続して3Dビジョンやアーム、ハンドを一括コントロールします。従来のロボットは稼働にティーチングが必要で、物流現場のように数万点のワークをハンドリングするのは非現実的でした。そのためロボット活用が進まなかったのですが、Mujinコントローラーの開発で状況に応じた柔軟な動きが可能になったのです。ロボットを素早く・ティーチレスで稼働できるため様々な工程にロボットを導入できます。現在はコントローラーを中心に3Dビジョンやハンドなどを含めた周辺機器も開発し、ソリューションとしてまとめて提供しています

●本紙:FA向けと物流向けに展 開されていますが、それぞれの市況感は。

◎石原:引き合いはコロナ禍以降は特に物流向けが伸長しています。FA向けもコロナ禍の始めは一時的に減りましたが、最近は活発に推移しています。弊社がサービスを開始したのは元々FA分野から。物流への参入は2015年でしたが、16~18年は1、2台のロボットで稼働テストを行うフェイズでした。19~20年にかけて数十台規模での量産を開始し、21年に『Mujinロボットシリーズ』というソリューションごとのパッケージ製品を発売。直近2年の売り上げに占める物流向けの割合は6~7割と伸長しています。そうした案件で自動化におけるロボット部分の一括請負を数多く経験しましたので、今はその知見を再びFA向けに展開し始めたところです。

●本紙:昨年には米国に子会社を 設立されましたが、狙いは。

◎石原:進出前から米国の案件は手掛けていましたが、世界的にも自動化需要は高まっており、早めに進出して足場を固める狙いがありました。米国の人件費は日本の2~3倍と高く、自動化にかける予算も大きい。米国では物流向けを中心に事業展開しており、9月にラスベガスで行った展示会でも複数の案件を獲得しました。拠点の拡大を迫られるほど引き合いを頂いており、予想より良いスタートを切れています。

産ロボを投資対効果の枠外へ

●本紙:勢いを持って成長を遂げ られていますが、その要因をどう見られますか。

◎石原:『Mujinは技術の会社』というイメージを持たれることが多いですが、成長要因で技術に起因するのは2割程度。残り8割は現場力だと捉えています。もちろん技術はひとつの強みであり、CTO自身がモーションプランニング技術の牽引者で他社に先駆けその技術をロボットに適用したという背景はあります。そうした環境に惹かれ世界中から技術者が結集しているのも特長ではありますが、我々の真の強みはロボットを『本当に現場で使えるソリューション』に昇華する力だと考えています。

●本紙:本当に使えるというと。

◎石原:デモ環境で問題なくとも、ワークの状態や日差しなど様々な要因が絡んで全く違う環境になるのがロボットの世界。デモから現場で使えるシステムに仕上げるには、技術だけでは解決できない要素が大きいんです。しかしMujinの創業目的はロボットによる社会貢献のため、デモで終わるシステムは必要ない。実用化という部分にピンを留め、泥臭く必要なことを1つ1つ積み重ねていくカルチャーこそが成長の要因だと思います。

●本紙:会社としての中長期的な方向性は。

◎石原:現状はMujinコントローラーを使って弊社の社員がシステム立ち上げを行っていますが、将来的には誰でも扱えるようにしたい。ここ数年はそうしたユーザーインターフェース(UI)向上に取り組んでいます。今までそこまで積極的に海外展開しなかったのも、まずは国内で機能追加やUIを高める必要があったから。コントローラーはまずはSIerの方に使って頂く形になると思いますが、将来的には誰でも簡単に使えるようにしたいですね。

弊社は沢山のロボットを購入・提供しており、だんだんとロボットの購入価格も下がってきています。このサイクルを加速させ、価格面でもUI面でも誰でも使えるようにするのが中期的な方向性です。将来的にはロボットをPCやスマホのような『投資対効果の枠外にある必要物』の地位に持っていきたい。従来は、ロボットにビジョンシステムを接続するだけでも膨大なプログラミングが必要でしたが、ロボットにMujinコントローラーを接続して少し操作を行うだけでシステムが立ち上がるようになってきました。さらに普及が進めば価格も下がる。そんな世界の実現をMujinは目指しています。

(日本物流新聞 2022年2月25日号掲載)

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