レビュー:グラインディング・テクノロジー・ジャパン

半導体や光学系、モーター、自動車、精密機器など、高度なモノづくりに欠かせない「先端研削加工」の展示に特化した「GTJ2023(グラインディングテクノロジージャパン2023)」が、2023年3月8日から3日間、千葉市の幕張メッセで開催された。展示内容を振り返る。

研削加工の専門展示会

GTJは日本工業出版と産経新聞社が隔年で開催しており、今回は19年、21年に次ぐ3回目。各種研削盤を中心に砥石、ツルーイング/ドレッシング装置、機上計測システムなどを148社・団体が出展した。研削技術の先端を見せる専門展だけあって、出展者からも来場者からも「凝った展示、玄人好みの提案が多いね」の声が聞かれた。

「自動車大手の集中研削室にも相当数の当社マシンが入っていますよ」―と自社ブースで笑顔を見せたのは、今年創立100周年を迎える宇都宮製作所の宇都宮崇寛社長。工具研削盤の主力機(TGR-250α等)が好調のようで、「ホブカッターの刃の裏を効率よく研削できる機能が評価をいただいている」などと話す。

研削盤に限らず自動車向け工作機械はここ需要が落ち着いたなどと指摘され、会場でも同様の感想をいくつか聞いたが、今の宇都宮社長の話にあるように、局面局面で需要は旺盛だ。ある大手研削盤メーカーの広報担当者は「EVに関連する長尺ロールの外径加工が盛り上がっていますよ。もうバブル状態。機械には見積り依頼や問い合わせが引きも切らないですね」と話した。

技術的には、研削ラインのなかで高レベルの精度確認を終えるという、高効率化を生む工程集約提案が多く、複数のブースで「機上計測」「オンマシン計測」「インプロセス計測」といった文字が踊った。もっとも、ここまでは想定内。しかし機上計測の高度化は確かに目を引いた。

岡本工作機械製作所は、研削盤上で3次元測定ができる仕組み(OKAMOTO NCゲージ)を静かにアピール。「超精密研削盤ゆえにできる機上での3次元測定。汎用感覚で使えます」と言う。牧野フライス精機は、砥石交換とローダーを標準搭載する工具研削盤(AGE30FX)に独自のマイクロビジョンシステムを搭載。これまで見られたドリルのオイルホールの位相や底刃の幅などに加え、先端Rや外径寸法、テーパー角度まで確認できる。「工具側面からも測定できるようにして測定項目を増やした。先端Rの測定はニーズが高い。機内で全ワークを洗浄して測定し、測定データはすべて残せる」との説明。

機上計測からは若干離れるが、工具の測定という点では、ZOLLAR JAPANが、これまで測れなかった部位も含め工具のすべてを3D検査できるチェッカーを出していた。

マシンの進化もさまざまみられた。研削盤8シリーズを一挙展示し「ヨソとは気合が違うんです」と担当者が笑わせた岡本工作機械製作所は、ワークのどの部分が高いかをリアルタイムに地図で表すソフト(MAP研削ソフト)の提案に特に力を入れていた様子。

平面研削盤上の砥石の左右連続した動きは、言うまでもなく凸部を研削し、平面度や面粗度を高めるためにあるが、実際はエアーカット、つまり結果的に必要のない動作がかなりを占める。ソフトはこのムダを無くす。ワークの凸部を文字通り地図で表現し、研削盤はそのデータに沿って凸部のみを集中研削(往復)する仕組み。「それも、機械は自動かつ自律的な動きで研削を終えるんです」。

超高精度を指向するナガセインテグレックスは昨秋のJIMTOFで披露したIGTARP(イグタープ)デザインをPRした。平たく「軽量化しながら剛性を高めた」新構造が注目されそうだ。3点支持でトポロジー最適化を行い、無駄を省きクラス最小のスペースも実現…。「今後のマシン設計を一新するデザイン」とした。

(日本物流新聞 2023年3月25日号掲載)

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