作業工具の進化と真価 <2>

時代が変われど褪せぬ魅力を放つ作業工具。その「進化と真価」を探るべく、作業工具メーカーの取材を行った。ともすれば「既に成熟したツール」とのイメージが付き纏う作業工具ではあるが、その実、動力を持たないシンプルさゆえにギミックによる誤魔化しが効かない実力勝負の業界でもある。そこで本特集では、作業工具の細部に宿る「ユーザーに選ばれる理由」をフィーチャー。各社の自信作をもとに、独自の進化を遂げたこだわりのポイントを紹介する。

【5】ベッセル 「ボールグリップドライバー」

ロングセラーにはワケがある

言わずと知れたロングセラー製品「ボールグリップドライバー」。「達磨形」とも言われる握る部分がボール形状になったドライバーで、ボール部を握り押し付けるようにネジを回すことで強い力が発揮できる。ベッセルと聞いてこのシルエットを連想する向きも多いのではないか。

1984年発売の同製品は当初から疲れにくいと評判だった。そうした「疲れにくさ」の数値化は難しく長年裏づけが取れていなかったが、近年解析を行ったところ、通常のドライバーと比べ骨格筋活動量が約20%少なく済むことがわかったという。定番製品の地位を獲得した裏には、そうした合理的な理由が隠れていたわけだ。

そんな同製品のなかでもスタンダードな「No.220」が今年、グッドデザイン賞の「ロングライフデザイン賞」に輝いた。10年以上市場へ供されていることが最低条件となる同賞において、受賞の決め手となったのはボールグリップドライバーの進化だったそうだ。

例えば 2000年代にダイオキシンが社会問題化した際には、金型を破棄してでもいち早く塩ビからエラストマー樹脂にグリップ素材を変更。貫通タイプやビット差替式など、ニーズを汲み取ったラインアップも次々と展開してきた。近年では電動アシストによる早回しと手動の本締めを両立した「電ドラボール」を発売。大ヒットを記録するなど、ボールグリップ形状を踏襲した様々な製品が生まれている。

「ここまで進化を遂げられたのは、ユーザーにこの形が合理的だと認知され、信頼を獲得しているから」と担当者。「これらの製品群はすべてベッセルのオリジナル。模倣だと改良が難しいが、その点我々ならユーザーの課題にとことん応えられる」と力を込める。

【6】フジ矢 「偏芯パワーペンチ(KUROKIN)〜バリ取り機能付き」

切断とボルトのバリ取りを1本で

黒地に金のワンポイント装飾を施した上質工具「KUROKIN(黒金)」シリーズ。高級感漂うシックなデザインが感度の高い職人のハートをガッチリと掴み、SNSでも多くのユーザーが写真を投稿するなど着々とファンを増やしている。

そんな黒金シリーズに登場した「偏芯パワーペンチ バリ取り機能付き」は、その名の通り支点を切断部に近づける偏芯機構を採用。テコの原理による強力な切断力を持ち、鉄線や鋼線をはじめφ2mmのピアノ線も軽い力で切断できる。空調・電工作業の頼れる1 本だ。

最大の特長はグリップの根元にある。ここにネジ山修正機能を配したことで、軽天工事に用いる寸切り3分(W=3/8)吊ボルトのバリ取りやネジ山修正が可能に。「全ねじは切断の際などに頭が潰れたりバリが発生することが多い」という現場のニーズを汲んだ便利な工具に仕上げた。

先端部を中心に全体を薄くしたことで、1サイズ下のクラスに迫る重量を実現。腰周りの負担を軽減しつつ、連続作業時の疲労も抑えられる。全長200mm、250mm の 2種類をラインアップ。

【7】MCCコーポレーション 「エンビカッタ(特殊コーティング)」

切り終わりまで軽快な切れ味

エンビカッタのパイオニアとしてプロの支持を集める MCCコーポレーション。そんな同社の配管工具に、「エンビカッタ(特殊コーティング)」が加わった。

最大の特長は刃に施した特殊コーティング。自慢の切れ味にさらなる磨きかかり、「切り終わりまで軽く滑らかな切れ味が続く」という。直角切断が可能で、後処理のいらない切り口の綺麗さも持ち味。ハンドルを開くと自動で刃が開く独自のワンタッチオープン機能を備え、片手作業を可能にしたことで作業性も高めた。

本体はダイキャスト製で軽さと強靭さを両立。ボルトとバネを外すだけで替刃の交換ができるユーザーフレンドリーな設計とした。

硬質ポリ塩ビ管、ポリエチレン管、ポリブテン管などの片手切断に対応。外径φ48mmまでを対象としたコンパクトな「VC-0348A」、外径φ63mmまで切断できる「VC-0363A」の2種類をラインアップしている。

【8】スーパーツール 「クイックワイドモンキレンチ」

ワイドなのに送りは超速

製品名を裏切らない大きな口開きが魅力の「クイックワイドモンキレンチ」。呼びが 250 のタイプで従来品では29mm だった口開きを、ワイドを上回る「超ワイド」な 50mmまで広げた。

口開きが大きくなると、比例してウォームによる送り操作が煩わしくなってしまうのが従来のモンキレンチの宿命。しかし同製品では、ウォームギアを下にスライドできる特殊機構を採用。「ラックとウォームの噛みあわせを外す」ことで、素早いサイズ合わせが可能となった。

こうした機構をモンキレンチに取り入れたのは「同社がはじめて」といい、すでに特許も申請済み。指で早送りする際にもわかりやすいよう、口開きを一目で視認できる目盛りも付けている。

グリップを肉抜きすることで、口開きの割に軽量なボディを実現。握り部にも工夫を施し、片側だけをやや分厚くすることで、手のひらに対し面で接触する握りやすい形にした。こうした機能を1丁に集約することで「一味違う」モンキレンチに仕上がった同製品。昨年8月の発売以来、ホームセンター向けなどで売れ行きも好調という。

作業工具の進化と真価 <了>

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